気候変動に立ち向かえるスーパー植物とは(13:47)

ジョアン・コリー(Joanne Chory)
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対訳テキスト
講演内容の日本語対訳テキストです。
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最近 ピンときたことがあります 人類が現在直面している 大きな問題のひとつを解決するのに 自分が一役買うことが できるかもしれないということです その問題とは気候変動です そして もうひとつ思い至りました 私が30年以上も研究してきたのは この段階に到達するため― 大きな問題に実際に貢献できる段階に 達するためだったのだ と これまでの30年間に 研究所で行ってきた― 数々の実験すべて そして この30年間に一緒に研究所で 働いてきた人々が この壮大な実験へと 導いてくれたのです 最後の大きな実験です

私が何者かというと 植物遺伝学者です 私の住むこの世界は 人間の活動のせいで 大気中に二酸化炭素が 増えすぎています でも 私には植物の真価を 理解するようになりました 素晴らしい機械とでも言うべき植物は 二酸化炭素を吸収する役割を 果たしてきたのです 5億年も続けてきたんですから たいしたものです 大変に得意としているのです ですから...

皆さんに差し迫って お伝えしたいことがあります 母親として 私は両親から 受け継いだ時よりも住みよい世界を 2人の子供に残したいですし 悪い方向ではなく 良い方向へと 前進し続けたいのです

それから... この15年間 パーキンソン病を患っているので この仕事に今取り組みたいという 差し迫った気持ちがあります 体調が許すうちに チームに貢献したいのです 素晴らしいチームです [ソークの植物チーム] 共に協力し合い 楽しいからこそ やり遂げたいと思うのです たった5人のチームで この地球を救うなら 仲良くないとやってられません 長時間一緒に過ごすことに なりますからね

(笑)

さて 私の話はこのへんにして 二酸化炭素の話をしましょう 二酸化炭素が このトークの主人公です みなさんの多くは二酸化炭素を 汚染物質だと考えるでしょう 小説でいう悪役の位置付けで 見ているかもしれません 二酸化炭素のダークサイドにばかり 目がいくものです でも 植物生物学者として 私は 二酸化炭素の別の側面も知っています 私たち植物生物学者が 二酸化炭素について 違う見方をできるのは みなさんが忘れている あることを 覚えているからです 植物が光合成を行うということです 光合成が行われると― 炭素を主成分とする 地球上の生命はすべて 植物や光合成細菌が 大気中の二酸化炭素から取り出した— 二酸化炭素があってこその存在なのです 端的に言えば みなさんの体内の炭素は 空気中から来ているのです みなさんは空気が素で出来ていて それは光合成のおかげです 植物は太陽光のエネルギーを使って 二酸化炭素から糖を 固定(生成)します 素晴らしいことです

今日みなさんにお伝えしたい― もうひとつの大切なことは 植物や光合成細菌は 光合成能力が非常に高く 人間の活動で生み出される 二酸化炭素の20倍以上を 処理できるのです ですから 私たち人間が 排出量の削減などを あまりできていないにしても 光合成生物である植物には 十分に対応する力があるのです そうなってほしいと考えています

しかし タダでは実現しません 人間側も植物に手を貸す 必要があるのです 植物は二酸化炭素のほとんどを 糖に変えたがるからです 生長期が終わりを迎えて 植物が枯れて分解されると せっかく わざわざ大気中から 二酸化炭素を取り出すことで 生み出された 炭素から成る有機物質が 今度は 二酸化炭素となって 大気中に戻ってしまうのです

では植物が取り出した二酸化炭素を もっと安定したものに作り変えるには どうしたらいいのでしょう? そこで分かったのは 植物がこちらの物質を作ることです 「スベリン」と言います あらゆる植物の根に 自然に含まれる物質です スベリンのすごいところは ご覧いただくと 分かると思うのですが 黒い点の部分は炭素です この分子に何百という 炭素原子が含まれています ところどころ見える赤い点は 酸素です 微生物は植物を分解する際に 酸素に引き寄せられますから スベリンは炭素が分解されずに残る 完璧な仕組みなのです 植物が固定した炭素を 植物にとって もう少し良い形で 安定化することができるのです

では なぜ今なのか? なぜ今 この問題に対して 生物学的な解決策を考えるのか? それは 過去30年ほどで― と言うと「なぜ今?」への答えにしては 長いと思うでしょうが― 30年前 一般的な生物が有する すべての遺伝子の機能が理解され始めました その対象には 人間や植物 そして 他の複雑な真核生物も含まれます では 1980年代に 何が始まったのか? 今では その成果で 植物の生長を促す 多くの遺伝子の機能が分かっています さらに これまでになく 迅速かつ安価な方法で ゲノム研究を行うことも できるようになりました そこから分かるのは 地球上の生命は どれもが類縁関係にあるが 植物同士は他の生物とよりも さらに近縁関係にあるということ そして ある植物に 特有の形質(性質)を 他の植物に導入すると 元の植物と同じことが起こると 予想できること これも重要です そして ここ最近発展したのが ちょっとした遺伝子操作です 午前中にもお話がありましたが CRISPR(クリスパー)など 遺伝子編集技術で 植物の遺伝子を 少し変異させることができます

ですから生物学は心強い味方なのです 私は生物学者ですから 気候変動の問題について 地球上の生物の中でも 最適な形で進化を遂げた― 植物を使った解決策を 提案しているわけです では どのように実現するのか? 生物学を役立てるのです はい 次 さてと

シンプルなことを3つ 覚えて帰ってください まず 植物に通常よりも多くの スベリンを作らせる必要があります 能力を強化する必要が あるということです 次に 植物にもっと多くの根を 作らせる必要があります 根が多ければ もっと多くスベリンを作れます スベリンが蓄積しやすい細胞が 増えるからです 3つめ 植物に もっと深く 根を張らせる必要があります これによって― つまり 植物にこうお願いするんです 「これまでよりも たくさん 安定した炭素を作って 地中に埋めてください」と 地表近くに根を張るのでなく 地中深く根を張れば 可能です

以上が 我がチームが 変えようとしている3つの形質です スベリンを増やし 根を増やし 深く根を張らせること これらの形質を ひとつの植物に集めたいのです 簡単にできますし 実現するつもりです というか すでにモデル植物の シロイヌナズナで始めています このモデル植物だと 大きな植物よりも 速く実験が進むのです 欲しい形質をすべて 兼ね備えた植物が完成し この品種で より多くのスベリンを 作れるようになったら これを応用します これも実現可能で すでに実現されつつあります 農作物に応用するのです なぜ農作物を 使うことにしたかについては 後でお話しします

これがこのプロジェクトの 科学的背景です 科学的な側面が機能する自信は かなりあります その理由は ちょうど昨年に この3つの形質に影響する遺伝子を それぞれ突き止めたからです いくつかの場合― 3つのうち2つの形質については 実現方法が複数ありますので 1つの形質の範疇内で 複数組み合わせることで スベリンをさらに 増やせるかもしれません これは ひとつの結果です 右側の植物は 左側の植物に比べ 2倍以上の根を広げています これは この植物に 元から存在する遺伝子のひとつを 通常とは少し違う形で 発現するようにしたためです これが お見せしたかった ひとつの例です

次にお話ししたいのは この問題に関しては いまだ多くの課題が 残っているということです なぜなら... 農家に種子を買ってもらうか 種子販売会社に 農家が使いたくなるような種子を 買ってもらわないと 始まらないからです ですから 実験するにあたって 収穫量を減らすことはできないのです なぜなら こうした実験を 10年後に始めるとしたら その頃には 世界人口は 今よりさらに増えているのですから 急速に増え続けていますからね 今世紀末までに 人口は110億人に達し それまでに生態系は人類に消耗され 農業が消費するぶんの負荷を 背負いきれない状況に なっているでしょう 土地を巡る競争もあります 二酸化炭素隔離の実験を 行うにあたって かなりの土地が 必要であろうと思われます しかし食糧生産用の土地を 犠牲にはできません この大問題を解決するまでの間も 地球上の人口に 食糧を供給しなければいけませんから 実は 気候変動によって 世界全体の収穫量は減っています 果たして 農家が 収穫量に影響が出るような種子など 購入しようと思うでしょうか? ですから 収穫量には 絶対に影響しないよう 実験の継続・中止を決める 厳格なチェックを 常に行うようにします 2つめは ある植物が より多くの炭素を固定し 地中に保持することができるとしても 実は地球上のほぼすべての土壌から 炭素が枯渇しています 現在 地球上にいる80億人に 食糧を供給するための 農業がもたらす負荷のせいです これもまた問題です 植物がもっと炭素を固定すると 土壌には炭素が豊富になります 実は炭素が豊富な土壌は 窒素や硫黄やリン酸塩など 植物の生長を促し 収穫量を増やすのに 必要なミネラルを保持でき 地中に水分を保つこともできます スベリンが小さな粒子に 分解されて 土質が変わるのです ご覧のように 土壌中の炭素が増えると 土壌は色が濃くなります 以上の要素はすべて 測定できますし 問題解決に寄与してくれるだろう と思っています いいでしょうか

我がチームの課題は 土地がたくさん必要だということと 農家に種子を買ってもらわないとならないこと なぜこれが私たちには 難題だと思うかというと 誰も営業向きではないからです 実際に人に会うよりも 相手の名前を検索するのを好むというか― わかりますよね?

(笑)

科学者はたいてい そういうものです

でも 今や気候変動が 起こりつつあることを 誰も否定できませんし 誰もが知っています 問題は現実のもので 状況は悪く深刻です 対策を講じなければなりません でも私は楽観的な気持ちです 乗り越えられると思います 私は今日 植物の性格を 証言するためにここにいます 植物は私たちのために 成し遂げてくれるはずです 少し手助けしてやるだけでいいのです そうすれば 人類のために 金メダル級の活躍をしてくれます

ありがとうございました

(拍手)

(歓声)

ありがとう

(拍手)

やっと発表できました

(クリス・アンダーソン)すごい ものすごい偉業ですね 確認させてください あなたが 今後10年間で 世界に提供しうるのは 小麦かコーンか米なのか― 主要な農作物の種子で 農家が収穫量を減らすことなく 現在の3倍 4倍以上の炭素を 隔離できるものだというのですね? それ以上ですか?

(ジョアン・コリー) 数字は分かりません 今以上だということです

(クリス)それと同時に 農地の土壌を肥やしてくれる 植物なんですね?

(ジョアン)そうです

(クリス)驚くべきことです これを実現する才能も すでに壮大なスケールの話なのに 拡大可能な解決策もです

(ジョアン)ありがとうございます

(クリス)お話そのままですよ 話がうますぎるのではと 思えるくらいすごい話ですね あなたのAudacious Projectは ラボでの研究から規模を拡大し パイロット実験開始につなげ この素晴らしいビジョンを 実現するというものですね

(ジョアン)その通りです

(クリス)ジョアン・コリー どうもありがとう 成功を祈ります

(拍手)

(ジョアン)ありがとうございました

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このプレゼンテーションについて

植物は驚くべき「機械」である ― 何百万年もの間、植物は空気中の二酸化炭素を吸収して地下に収蔵し、世界の気候を保っていたのですから。植物遺伝学者のジョアン・コリーは、この特別な能力を拡張すべく研究を進めています。ソーク植物/分子・細胞生物学研究所の同僚たちとともに、コリー博士はより多くの炭素を地中深くに何百年も保持できる植物を作り出そうとしています。こうした過給植物が気候変動を緩やかにするのに、どう貢献できるのか、見ていきましょう。 (この大胆な計画はAudacious Projectという、世界的な変革を生み出し、投資するTEDのプロジェクトの一環です)

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