シカゴの廃屋をアートに変えた理由(13:22)

アマンダ・ウィリアムズ(Amanda Williams)
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対訳テキスト
講演内容の日本語対訳テキストです。
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私は本当に色を愛しています どこでも 何にでも 色を見いだします 家族によくからかわれます 私が分かりにくい名前の色を 使いたがるからです 例えば 青磁色

(笑)

生成り色 洋紅色 さて お気づきでなければ 私は黒人です どうも

(笑)

そして シカゴのように 人種が分離された街で育つと 「色と人種は不可分だ」と 考えるようになります ほぼ毎日と言ってもいいくらいに 自分が黒人であることを 思い起こさせられます 人種主義は私の街に はっきりと表れています

さて 人種は社会的に作られたものだと いうことは明らかですが 日々の生活で そう理解するのは難しいものです あまりに広く浸透しているからです 私が育った界隈は 文化的に記号化された美に 溢れていました 主だった商店街には 明るい色の店構えが並び 黒人の客を引きつけるべく 競っていました 街角の雑貨店や美容用品店 外貨両替店などは 視覚的な混交をなし 私は思いがけず基本的な原理を 学ぶことになりました 後に色彩理論として認識したものです 大学では この色彩理論という言葉に 気圧されていました 古臭くて年老いた白人男性たちや 彼らの論文 そして不明瞭な用語を 恐れていたのです 私は それらの色彩と関連する原理を すべて習得しました 色彩原理は 端的に言えば 色を用いて構成や空間を 形づくるアートとサイエンスです そんなに複雑ではありません

これは大学での私のバイブルでした ヨゼフ・アルバースが立てた 赤色に関する仮説は ずっと強く印象に残っています 彼が言うには コーラ缶の象徴的な色は赤色であり そして実際に赤色だと 皆が同意できるものの 私たちが「赤色」と聞いて 想像する色は 人の数だけ 様々な種類があるのです 考えてみてください 私たちが幼稚園以降 ずっと原色だと教えられてきた― 赤色 黄色 青色― これらは実は原色ではなく 最も単純化されてもおらず 客観的でもなく かなり主観的なのです どういうこと?

(笑)

アルバースは これを「関係的」と呼びました 関係的 この時 初めて 自分の育った界隈を関係的な文脈で 見ることができました それぞれの色が 隣の色に影響されているのです それぞれの人が 隣人に影響されるように

1930年代に 米国政府は 連邦住宅局を作りました 連邦住宅局は地図を作成し 体系的に色分けすることによって どの地域が 政府からの住宅ローンを 受けるべきか否かを示したのです この居住安全性地図には 独自の色彩があり 私が大学で勉強してきた 全ての色彩を合わせたものよりも 大きな影響力を持っていました 私の住むような界隈の人には 銀行は融資しませんでした 私の地域は D86 です 地図制作者は 文字通り これらの地図に色を塗ることで その色に「危険」というレッテルを 貼ったのです 赤が新たに使われるようになり 黒人の住む地域は 赤色に塗られました

この問題は今も続き 最近では 差し押さえの頻発に見られます シカゴで この問題が 象徴的に表されているのは サウスサイドとウェストサイドの空き家の 正面に派手に描かれたXの印です 現実には 他の人の色彩によって 私の身体的な存在と 芸術的存在が決められていたのです ばかばかしい

私は自分の色彩を作ることにしました 私の住む地域の人と話して 他人に色彩を決められてきた現実を 変えることにしたのです この色彩は 幅広く探したり 論文を調べたりする必要はなく 既に知っていたものでした この現実からは どのような画家が生まれるのか? 都市部は何色なのか? スラム街は何色なのか? 特権は何色なのか? ギャングに関連する色は? 下層住宅地の高級化の色は? 警察官に殺されたフレディ・グレイや マイク・ブラウンは何色なのか? ようやく私は 人種に影響された色の認識と 理論的な色の認識を 繋ぐ方法を見つけました そして3人目の我が子を 産み落としました 「(有)色理論」です

(笑)

「(有)色理論」は2年間の 芸術プロジェクトで 独自の方法で 私独自の色彩を 私が住む地域に 適用したものです 今 79番街を歩いて 50人に青緑色より 少し緑がかった色の名前を尋ねたら 不審な目で見られるでしょう

(笑)

でも「ヘアケア製品の ウルトラ・シーンは何色か」と聞けば みんなが笑顔になって お祖母さんの家の 浴室の話をしてくれます 誰にとってもターコイズ色より ウルトラ・シーンでしょう 誰にとっても青緑色より ウルトラ・シーンでしょう 誰にとっても群青色よりー

(観客)ウルトラ・シーンでしょう

(笑)

このようにして私は 独自の色彩を作りました 家族や友人 自分と似た生い立ちの人に このような話や思い出を聞きました 幸せな話ばかりでは ありませんが いつでも製品自体より 色の方が共感を呼びました 私はこの理論を持って 街に出ました 「ウルトラ・シーン」 「ピンク・オイル保湿液」 シカゴ出身なら知ってる 「ハロルドのチキン・シャック」

(笑)

「両替店+安全な通路」 「火を吹く激辛味」 「ばら売りのタバコ」 「クラウン・ロイヤルの布袋」

私はエングルウッドという 悪評高い地域の 解体直前の家々を塗りました 車のトランクに入るだけの塗料を集め 最も信頼のおける アーティスト仲間を呼び 素晴らしい夫を 常にそばに 外壁を隅から隅まで 単色で塗りました 規模を今までにない形で 理解したかったのです 想像する限り 一番大きなキャンバスである 家屋に色を塗りたかったのです 私は自分が育った馴染みのある通りを 熱心に往復しては 家々を市のデータと照らし合わせて 解体とタグ付けされ 救われもせず 朽ちるままになっていることを 確認しました 私は色に自由にさせるとは どういうことかを実感として理解し 自分の直感を信じ 許可を求めることを やめようと思ったのです 市役所職員との会議もせず 地域からの支持も得ようとせず ただ色が支配するままにさせました サウスサイドに違うイメージを 与えたいという思いゆえです

これらの家々はきれいに揃った家屋とは 正反対のものです この環境の中で モノポリーの駒のように目立つように 色を塗ったのです 日曜日の早朝に出かけて 塗料がなくなるか 誰かに文句を言われるまで塗り続けました

「おい あんたが塗ったのか?」 ある日 この写真の撮影中に 運転している人に聞かれました

私は緊張して答えました 「はい」

すると彼の表情が変わりました 「残念 歌手のプリンスが 来るのかと思ったのに」

(笑)

彼はこの一角で育ったので 車で通りがかって 廃屋の色が不思議にも ひと晩で変わったのを見て連想したのは クラウン・ロイヤルの布袋ではなく プリンスからの 秘密の合図だったのです

(笑)

すべてがほぼ消えかけている界隈にあって 思いがけない場所に プリンスが突然現れ 音楽業界も社会も 今や無価値と見なしている地域で 無料の公演をしてくれるかもという 発想です 彼にとっては この家の様子から プリンスが来てもおかしくないと 思いつくこと それ自体が 可能性だったのです その瞬間に エグルストンの一角が 気高さと同義になったのです たとえほんの一瞬でも エリック・ベネットの住む界隈が 価値を取り戻しました 私たちはお互いを 知らないにもかかわらず どの高校に通ったか どこで育ったか 何々さんのお菓子屋さんなどの サウスサイドでの 子供時代の話をしました そして 私が このプロジェクトはプリンスと 全く関係ないと教えると エリックは 合意したようにうなずき 別れ際に 車を発車させながら 「でも 来るかもよ!」 と言いました

(笑)

彼はこのプロジェクトを 完全に自分のものにして 作者である私の手にさえ 渡そうとしませんでした このことが私にとっての 成功でした

このプロジェクトによって この地域が変貌を遂げて 職の増加 犯罪の減少 アルコール依存症の消滅といった 我々が重視する指標を劇的に変化させたと 言えればいいのですが 現実はもっと曖昧です 「(有)色原理」は 黒人であることの価値に関する 新たな対話をもたらしました 「(有)色原理」は 厄介な問いを はっきりと視覚化させました 現在のやり方を続ける理由について 組織や政府が自ら問う必要のある問いです そして同じく私や 似たような境遇の近所の人々にも 私たちの価値観と 集合的な代理に向けた道筋が いかにあるべきかを問いかけました 色は 許可や肯定や仲間に入れてもらうのを 待つ必要のない自由を 私にもたらしてくれました 色は 私が今 支配できるものになったのです 近所に住む色塗り部隊の一員が うまく言い表してくれました 「このプロジェクトで 界隈は変わらなかったけれど 住んでいる地域の可能性についての 人々の意識を多かれ少なかれ変えた」と

通りすがりの人によく聞かれました 「取り壊されると知っているのに なぜその家を塗るのか」と 当時は その答えが 全く分かりませんでした ただ何かしなければならないと 思っていました 私はすべてを投げうってでも 色彩を媒体として そして社会で認識される不可避な方法として 理解したかったのです もし私にこの世界を少しでも 良くすることができるなら 私はこの両方の認識のされ方を 愛し活用する必要があります そこには価値という名の明度と 考え方という名の色調があるのです

ありがとうございました

(拍手)

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このプレゼンテーションについて

この力強く視覚的なトークを通じて、アマンダ・ウィリアムズは、人種に関する自らの経験やアーティストとしての活動を通じた色彩原理の発見といった、生涯を通じて魅惑されてきた色彩の複雑さについて語ります。ウィリアムズと一緒に、シカゴのサウスサイドを訪れて「(有)色原理」について探ってみましょう。これは2年間にわたる芸術プロジェクトで、解体寸前の廃屋の数々を、土着的な意味合いを持つ、はっきりとした単色で塗るというものです。このプロジェクトは対話をもたらし、隠されていたものを目に見えるようにしたといいます。

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