うつやPTSDを予防できる新種の薬(5:09)

レベッカ・ブラックマン(Rebecca Brachman)
このページをシェアする:
対訳テキスト
講演内容の日本語対訳テキストです。
※映像と合わせてご覧になる方へ
自動スクロールはしませんので、映像に合わせてスクロールさせてご覧下さい。

最初の抗うつ剤は あろうことか 第二次世界大戦後に残された ロケット燃料から作られました 戦争といえば こんにち兵士の5人に1人が うつやPTSDになっています しかし こうした病気になるリスクが 高いのは 兵士だけではありません 消防士、救命医、がん患者 援助活動家、難民― トラウマや人生における大きなストレスに 晒されている誰もがそうです これらの障害が ありふれているにもかかわらず 現在の治療は 効果があったとしても 症状を抑えるだけです

1798年にエドワード・ジェンナーが 最初のワクチンを発見したときー それは天然痘用でしたが— 彼は単にある病気の薬を 発見したというだけでなく 全く新しい考え方 つまり 薬で病気を予防できることを 発見したのです しかしながら 200年以上もの間 病気の予防が精神疾患でも可能とは 考えられていませんでした 2014年に 同僚と共に私が 偶然にも うつやPTSDを予防できる 初めての薬を 発見するまではそうでした 私達はマウスでその薬を発見し 現在それが人間にも有効かを 調べています この予防的な向精神薬は 抗うつ剤とは違います 全く新しい種類の薬です ストレス耐性を 高める事によって効くので 「耐性増強剤」と 呼ぶ事にしましょう

これまでに立ち直ってきたストレスの 多い時期を思い起こしてみてください 失恋や試験 飛行機の乗り遅れかもしれません ストレス耐性は 能動的な生物学的プロセスで ストレス後の回復を 容易にします 風邪をひいたら免疫系が それを撃退するのと同じです 十分な耐性がない場合 かなりのストレス因子に 晒された結果として うつといった精神障害に陥る 危険性があります 実際 大うつ病は ほとんどの場合 ストレスが 最初の 引き金になっています マウスでの観察では ストレス耐性増強剤は ストレスホルモンのような 純粋な生物学的ストレス因子にも いじめや孤独といった 社会心理的ストレス因子にも 防御効果があります

これはマウスに高レベルの ストレスホルモンを 3週間与えた例です 心理的要素のない 生物学的ストレス因子を与えたという事です それによって うつ状態の行動が現れます 前もって 抗うつ剤を 3週間与えておいても 全く何の効果もありません しかし1週間前に 耐性増強剤を一回与えると うつの症状を 完全に防ぐ事ができるのです 3週間ストレスを受けた 後でさえも 薬がストレスの悪影響を 防ぐ事が示されたのは これが初めての事です

うつやPTSDは慢性で しばしば生涯にわたり治療の必要な病気です それはまた 薬物乱用 ホームレス化、心臓病 アルツハイマー病、自殺などの リスクを高めます 全世界でかかる社会的コストは うつ病だけで 年間3兆ドル以上です でも 誰かが極度のストレスに 晒されるリスクが 高いと前もって 分かっていたら— たとえば赤十字ボランティアが 地震被災地に入るような場合ですが 腸チフスワクチンに加えて 耐性増強剤を 現地への出発前に 投与する事ができます 略奪者に銃口を向けられたり もっと酷い目に遭っても 少なくとも そのために うつやPTSDになる事は 防げるでしょう この薬でストレスを受けるのを 免れる事はできませんが 薬のお陰でストレスから 立ち直る事ができます そこが画期的なところです 耐性を高める事によって うつやPTSDになる可能性を 劇的に下げます 職や家、家族そして命さえ 失うような事態を避けられます

ジェンナーが 天然痘のワクチンを発見した後 他の多くのワクチンが 続々と作られました しかし結核のワクチンが 広く利用できるまでには 150年以上かかりました なぜでしょう? 結核に罹ると 人の感受性が高まり より創造的で同情的になると 社会が信じていたことが一因です 結核は生物学的なものではなく 気質によって引き起こされるのだと うつについては同様の事が いまだに言われています ジェンナーの発見が その後に続く 全てのワクチンへの扉を開けたのと ちょうど同じように 私達が発見した薬によって 「予防精神薬理学」という 全く新しい分野の可能性が 開けるのです しかしそれが15年後になるのか 150年後になるのかは 科学だけではなく 私達が社会としてどうするか という選択にかかっています

ありがとうございました (拍手)

  • テキストだけで読む
  • 元に戻す
このプレゼンテーションについて

うつやPTSDに対する現在の治療は、効果があったとしても、症状を抑えるに留まっています。これらの病気にかかることを根本的に防げるとしたらどうでしょう?神経科学者であり、TEDフェローであるレベッカ・ブラックマンが、自分の研究チームが偶然に発見した新種の薬についてお話しします。それはストレスによる悪影響を防ぎ、回復と成長をする人間の力を高められる初めての薬です。このストレス耐性増強剤によって、精神疾患の治療方法がどう変わりうるのかを学びましょう。

こちらもオススメ!

気候変動によって出現する異常な気象パターン

ギャビン・シュミット

エイジズム(高齢者差別)に終止符を!

アシュトン・アップルホワイト

医療をどう治すか?

アトゥール・ガワンデ

幸せな結婚生活を築き、離婚を避ける3つの方法

ジョージ・ブレア=ウェスト

悲しみはそこから「次へ進む」ものではなく、共に歩んでいくもの

ノラ・マキナニー

自分の物語を変えることで人生は変わる

ロリ・ゴットリーブ

革新的なことをしたいなら「ナウイスト」になろう

伊藤 穰一

視覚障害者が世界を自由に探索できるようにする新技術

浅川智恵子

ドクターズゲートおすすめコンテンツ

40代・神経内科K先生の
"やってよかった"対策法

専門医制度の改変前に…
残り1ヶ月でも間に合う
勉強法を紹介

by メディックメディア

ドクターマンガ
Doctor's History

各分野の先頭で活躍する
ドクターの半生をマンガで
描く大人気コンテンツ!

by リンクスタッフ

脊柱側弯症手術の未来を
開いたスペシャリスト

脊椎・側彎症外科センター長
副院長 Dr.江原宗平
インタビュー。

by シーメンス・ジャパン

最新医療機器紹介コラム
『医療最前線』

心臓外科手術の職人が
最新医療器具を術者の
視点で鋭く考察します

by リンクスタッフ

動画一覧へ戻る

視聴数ランキング集計期間: 8/25~9/7

TED 最新15件