もしも無作為に選ばれた人たちが政治家になったら(9:32)

ブレット・ヘニッヒ(Brett Hennig)
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対訳テキスト
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大きな問いの1つについて 話したいと思います もしかしたら最大の問いかもしれません 人間はどう共生すべきなのでしょうか? 集団として 例えば同じ都市で もしくは同じ大陸で ひいては地球全体で どうやって共通の資源を共有し 管理していけばいいのでしょうか? 人々を統治するルールを どう作るべきなのでしょうか?

この問いは 今までも常に重要でしたが 現代では 重要性が いっそう増すでしょう 格差の拡大や気候変動 難民問題 をはじめとした— スケールの大きな問題に 取り組むのであればです これは 非常に古くからある 問いでもあります 仕組みの整った社会の中で 生きるようになってからずっと 人はこの問いを 自問自答してきました

例えばこの人 プラトンは 人類には 公益のために 意思決定のできる— 慈悲深い「守護者」が必要だ と考えました 王や女王は 自分たちこそが 「守護者」になれると考えましたが 様々な革命が起きる中で 失脚する傾向がありました また 皆さんはおそらく ご存知のこの男性 ここハンガリーの市民は 共生方法について この人物が出した答えを実践する 試みの中で長年過ごしましたね その答えは 残虐で無慈悲 かつ非人道的なものでした しかし それとは異なる答え いや異なる種類の答えが 2000年ほどの間続いた 「冬眠」状態から目覚め 近年 著しい成功を収めました その答えは もちろん 「民主主義」です

民主主義の近代史を 簡単におさらいすると こんな感じです 横軸を直近の200年間 縦軸を民主主義国家の数とした時 そのグラフはこうなります このグラフで重要な点は この200年間で急激な増加を遂げている ということです それゆえ20世紀は 民主主義が勝利した世紀と呼ばれ そしてフランシス・フクヤマが 1989年に提唱したとおり 一部の人は 「人類は歴史の終わりに到達した」 「人類の共生方法についての 答えも導かれた それは自由民主主義だ」 と信じているのです しかし この主張を検証してみましょう 皆さんの考えを教えてください

これから2つ質問します 賛成であれば 手を挙げてください 1つ目「民主主義の下で暮らすことは 良いことだ」と考える人は? 民主主義に賛成の人は? もっと良い制度が他にあると思う人は 手を下げたままで 手を挙げない人がいても 問題ありません もっともな理由があるはずです 2つ目の質問です 「民主主義が十分に機能している」 と思う人は? ほらほら この中に政治家の方 1人くらいは いるでしょう(笑)

挙がりませんね でも私が言いたいのは もし自由民主主義が 人類の歴史の終着点だとしたら 巨大なパラドックスもしくは 矛盾が存在するということです なぜなのでしょうか? 1つ目の質問は 「民主主義の理想」について どれも魅力的な要素です [平等 公平 正義 合法 責任 安定性] しかし実践ではうまく行っていません これが2つ目の質問の意図です 私たちの政治は崩壊していて 政治家たちは信用ならない 政治制度は強大な既得権益者たちに 歪められているという状況です

私はこのパラドックスの解決策は 2つあると思っています 1つは「民主主義をやめる」 だって機能していないのですから 選挙では 大衆扇動家を選びましょう 民主主義規範を度外視し 自由主義による自由を踏みにじり ただ役割をこなすだけの人間です もう1つは「今壊れている 政治システムを直す」 「実践」を「理想」に近づけるため 社会の多様な声を拾える議会を作り 長期的な公益のため 熟慮され 根拠に基づいた法律を 作ってもらうのです ここから私はひらめきを得ました 悟りに至ったのです 分析的な視点で 自問自答してみてください 「うまくいかないとしたらなぜか」 そして後で私のところへ 話しに来てください この方法は 政治用語でいうと「抽選制」 一般的な表現は「無作為抽出」です 実はとても単純な考え方です ランダムに人を選び 議員にしてしまうというものです(笑)

これについて もう数分 考えてみましょう 想像してみてください そこ そこ そこ そして そこの方 その他 適当に選んだ人々に これから数年間 議員をやってもらうとします もちろん 選出される人々が 社会経済的かつ統計学的な面で 国民全体の姿を反映し 「真の市民の代表」であるよう 各層から まんべんなく選びます そうすると半数は女性 多くは若者です 年のいった人もいるでしょう 一部は富裕層 でも大多数は あなたや私のような一般人でしょう これは「社会の縮図」です この縮図では 政策決定の 道徳的核心に辿り着くのに十分な 時間や情報 そして 適切なプロセスがあれば 国民全体の考えを シミュレーションできます もし自分が議員に選ばれなくても 同い年や同性 同じ出身地や経歴を持つ 他の誰かが 選ばれているのです

その人たちが下す決定は 「民衆の知恵」の上に成り立っています 各分類の寄せ集め以上の 存在になるのです 物事を客観的に分析して考え 専門家へのパイプを持ち 民に「君臨する」のではなく 「仕える」人々です そして 幅広い社会的課題や 問題に直面したとき 「多様性が能力に勝る」 ということを証明してくれます これは世論調査による政治ではありません 住民投票による政治でもありません この 情報を持ち審議する人々が 公的な意思決定に際し 世論以上の働きをするのです

しかし これには大きな副作用が伴います 選挙制に代わって抽選制を採用し 議会が 真に社会を代表する人たちの 集まりとなれば 政治家は用無しになります そんな状況を見るのは 皆とても悲しいことでしょう(笑)

とても興味深いことに 無作為抽出は 古代アテネにおいて 民主主義を実践する上で 重要な要素でした この「装置」いや「道具」は 「クレロテリア」と呼ばれ 古代アテネ人が作った 無作為抽出の「道具」でした 古代アテネでは ランダムに選出された市民により 政治的な地位の大多数が 占められていました アテネ人は 選挙とは 貴族が考えた道具であるということも ベテラン政治家は避けたい存在だ ということも知っていました 皆さんもご存知の通りです しかし 古代の無作為抽出より もっと面白いのが その手法が今 再流行しているということです 政治における無作為抽出の正当性が 最近 あちこちで 再発見されているのです 事例が多すぎて 取り上げきれないほどです

もちろん 私たちの議会に 導入するのは難しいことぐらい 十分に承知しています 試しに友人に向かって 「議会は無作為に選んだ人たちで 構成すべきだと思うんだよね」と言ったら 「それ本気で言ってる? もし近所の人が選ばれたらどう? ゴミの分別さえできない人だよ」 となるでしょう しかし 現代における事例全てが おそらく驚くような しかし 圧倒的かつ説得力のある 証拠をもって 無作為抽出は使えるのだと 示しています 人は責任を与えたら 責任感ある行動をとるものです 誤解しないでくださいね これは万能ではありません 「これが完璧な解決策なのか?」 という話ではありません もちろん違います 人間は過ちを犯す生き物で 歪んだ影響力は存在し続けるでしょう

問うているのは「改善されるのか?」 ということです そして 少なくとも私の答えは 「間違いなくそうだ」です さて 最初の問いに戻ります 人間はどう共生すべきなのでしょうか? もう答えはわかりますね 「抽選制で作られた議会」 です しかし どうすれば現状から そこへ行けるのでしょうか? どうすれば 壊れた政治システムを直して 21世紀の民主主義を 構築し直せるのでしょうか?

できることはいくつかあり しかも実は 今まさに 実践されています 抽選制で実験すればいいのです 学校や職場 他の組織などで 導入してみればいいのです Democracy In Practiceが ボリビアで行っているようなことです また 政策陪審団や市民議会を 立ち上げることもできます これはオーストラリアの団体 newDemocracy Foundationや アメリカのジェファソンセンター アイルランド政府でも 現在 行われています さらに 変化を求めて 社会運動を始めてもいいでしょう NPO団体 Sortition Foundationが イギリスでやっているようなことです そしていつか 制度化していくべきなのです

おそらく第一段階は 上院議員を全員 無作為抽出で 選ばれた市民にすること いわば「市民の上院」です フランスでは「市民の上院」を求める 政治運動が起こっています スコットランドでも 同様の動きがあります そしてもちろん ここハンガリーでもあります 政府の中心にトロイの木馬を 送り込むようなものです そして 現体制の欠陥を カバーしきれなくなったら それを機を 選挙制をやめて 抽選制に移行しなければなりません

私には願いがあります ここハンガリーでは これまでにも制度が作られ 壊され 置き換えられてきました 変化は起こりうるし 起きるものです いつ どのように起きるかが 問題なのです

ありがとうございます (ハンガリー語で)ありがとうございます(拍手)

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このプレゼンテーションについて

民主主義が壊れているとお考えのあなた、こんなアイデアはどうでしょうか:「無作為に選ばれた人たちが政治家に代わって政治を行う」 作家であり活動家でもあるブレット・へニッヒが「抽選制による民主主義(政治家の無作為抽出)」を提唱し、力強く主張します。これは古代アテネ発祥で、民衆の知恵を活用し、公共の利益のためのバランスの取れた決定を一般人に委ねる制度です。突飛なアイデアでしょうか? 党利党略政治のない世界を作るため、この制度をどのように活用できるか学びましょう。

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