ベビーブーム世代がミレニアル世代から職場で学べること—その逆もまた然り(12:23)

チップ・コンリー(Chip Conley)
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対訳テキスト
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シリコンバレーで注目の新興企業で 働き始めて3日目— 2013年初めごろです 部屋に10数人のエンジニアがいましたが 私だけみんなの倍の齢でした その企業に雇われたのは 自分の分野では ベテランの専門家だったからです でも その部屋の中に限っては テクノロジーの天才たちに囲まれた 初心者の気分でした 話し合いを聞きながら これはもう透明人間になるしかない と思いました すると突然 会議を進行していた25歳の 「天才」が 私をじっと見て訊いてきました 「ある機能を世に送れても 誰も使わなかったら 世に送れたのだと言えますか?」

(笑)

「機能が世に送れた」って? その瞬間 むしろ自分が 「世に遅れて」いるのだと悟りました

(笑)

彼が何を言っているのか 全然分かりませんでした 私が気まずそうに黙っていたので 彼は気を利かせ 別の人に話を振りました 私は椅子に身をうずめ 早く会議が終わってほしい と願いました

これが私のAirbnb社での始まりです ミレ二アル世代の 共同創業者3人に招かれ 私が頼まれた仕事は この急成長中のテクノロジー新興企業を 世界的なサービス業ブランドにすることと CEOブライアン・チェスキーお抱えの 助言者になることでした 私は26〜52歳まで ブティックホテル業の起業家だったので その界隈のことは まあまあ詳しかったですし ホスピタリティ業界の知識も あったと思います ですが 最初の1週間が過ぎ ホームシェアリングという 新しい大胆な業界に 古風な従来型ホテル経営に関する洞察など さほど必要ないと痛感しました 容赦ない現実が私を襲ったんです 私には何が提供できるのか?と テクノロジー企業で働いたことは ありませんでした 5年半前は「シェアリングエコノミー」 なんて聞いたこともなく UberやLyftのアプリも 使っていませんでした 私の知らない世界だったんです

だから その時こう考えました 安全な場所を求めてトンズラするか この天才たちを「たかが若者」と 決めつけてしまうか それとも 決めつけるのではなく 好奇心を持って 私の熟練した目と彼らの新しい目を 融合できないか サモアで原住民の少年少女に囲まれる かのマーガレット・ミードになった気分でした そして 彼らから受け取れる分だけ 自分にも提供できるものがあると すぐに分かりました

それぞれの世代に触れて学ぶほど 気づかされるのは 私たちは互いの世代を 十分に信頼していないことが多く 各世代の知恵を 共有できていないということです 互いの境界線は分かっていても 必ずしも 互いを十分に信頼しておらず 各世代の知恵を共有できていません 現代の仕事場を見ていて 強く思いますが 現代の「世代間通商協定」のおかげで 世代間の知恵を分かち合うための パイプラインが開通し 互いに学び合うことが 可能になっています

アメリカ合衆国では 40%近くの人が 自分より若い上司を持ち この割合は急速に増えています 今までにないほど 若者へと権力が流れ込んでいる理由は この国のDQへの依存の高まりにあります デジタル知能指数です 若者たちが20代前半で会社を設立し 30歳にもならないうちに 世界の大企業に成長させていますが そんな中 私たちは こうした若きデジタルリーダーが 私らのような年長労働者が 長年かけて培った「人間関係の知恵」を どうにかして 見事に活用してくれることを 期待してしまいます

心の知能指数(EQ)が成長するのには 時間がかかります ジェンダーや民族的に多様な会社は 業務効率が良いという証拠なら 十分にありますが 年齢はどうでしょうか? これは重要な問題です なぜなら これまで1つの職場に 意図せずして5世代が共存するという状況は 一度もなかったからです そろそろ 世代全体としての働き方を もっと意識しても良いかもしれません ヨーロッパで行われた多くの研究で 年齢の幅が広いチームのほうが 業務効率が良く 成功すると立証されています ではなぜ「ダイバーシティ&インクルージョン (多様性と包括性)」を 取り入れている企業の8%しか 実際にこの戦略を拡大して 社員の人口比に対して ジェンダーや人種だけでなく 年齢も考慮してきていないのでしょうか? 世界は高齢化しているという公然の事実に 気づいていないだけかもしれません 世界は高齢化しているという公然の事実に 気づいていないだけかもしれません

現代のパラドックスの1つが ベビーブーム世代は これまでの世代よりも活発で健康であり より長く働き続ける反面で 自分は用ナシであるかのような気持ちを 募らせていくという現状です 中には 自分が古い牛乳のようで シワシワの額には賞味期限の印を 押されていると感じる人もいます 私たち中年の多くにとって これは 単なる感情ではなく厳しい現実です 突然仕事を失ったり 誰からも連絡が来なくなります 私たちの多くが 懸念を持って当然なのです 培ってきた経験が資産ではなく 負債として見られるのではないかと こんな昔の言い回し— 割と最近のものかもしれませんが— 「今の60歳は 身体的には 昔の40歳と同じ」 わかりますよね? ですが 現代の職場での権力となると 今の30歳は 昔の50歳と同じです なるほど 楽しそうな職場ですよねぇ

(笑)

実際のところ 権力を持つ人の年齢は 10歳若くなっており 私たちの寿命は10年延びています 計算してください 社会には 20年間の空白の期間が 新たに生じています 昔は「中年」といえば 45~65歳を指しましたが 今は「中年」という名のマラソンも 35~75歳の40年間に延びた と言ってもいいでしょう ですが希望もあります なぜ人は 年を取るにつれ 聡明で賢明になるのでしょうか? 身体的な全盛期は20代で 金銭や収入の全盛期は50代でしょう ですが 感情面での全盛期は 中高年になってからです 自分や他者についての パターン認識が発達しているからです

では 企業はいかにして デジタルの若き天才たちを 育成するのと同じように 中年社員たちの知恵を うまく活用できるのでしょうか? 現在も将来も 最も成功するのは この2者を融合し 強力な関係へと 転換する「錬金術」を習得する企業です

Airbnb社での錬金術で 私はこうなりました 若くて賢いパートナーが付き ホスピタリティ部門を発展させる 手助けをしてくれました ローラ・ヒューズは早くから 私がこの世界で戸惑っていることを察知し 会議では よく私の横に座り テクノロジー用語の説明をしてくれ 私がメモを差しだすと 意味を教えてくれました 当時 ローラは27歳で Google社で4年勤務した経験があり 私と出会った時は Airbnb社にきて1年半でした 彼女のミレ二アル仲間の多くもそうですが ローラはまず現場で管理職へと成長し そのあと初めて 正式なリーダーシップ研修を受けたのです BtoBのビジネスだろうが BtoCだろうが CtoCだろうが AtoZだろうが 関係ありません ビジネスは 根本的にHtoHです つまり人と人です ですが リーダーシップに対する ローラのやり方は テクノロジーが支配する世界で 身につけたもので 完全に数値ベースでした 最初の数ヶ月で言われました 「あなたのリーダーシップへの 取り組み方は素晴らしいわ 説得力のあるビジョンを作ると それが私たちの道しるべになるのね」

私が持つ「事実」の知識は 1人のメイドが8時間で掃除する 部屋数は?などは ホームシェアリングの世界では さほど重要ではないかもしれません ですが私が持つ「プロセス」の知識— 会議室にいる全員が心の底に持つ動機を 理解することに基づく 「仕事を片付けるノウハウ」といったものは ものすごく貴重な知識でした この企業には 組織経験が豊富な人が ほとんどいなかったからです Airbnb社で働くにつれ 年配者の職場での新たな在り方を 見い出すことは 可能だと分かりました 敬意を払うべき対象だった 過去の年配者の話ではありません 現代の年配者の特長として 注目すべきはその適応能力です つまり いつの時代も変わらない知恵を 現代の問題に応用する力です

そろそろ 技術革新と同じくらい 知恵も重要視すべき時なのかもしれません もしかしたら— 「もしかしたら」ではなく 確実にそうなのですが 今こそ「年配」という言葉を改めて 現代風にアレンジすべき時です 今の年配者は 助言者の立場同様に 実習生の立場にもいます なぜなら 急速に変化を続ける世界では 彼らの「初心者の心」と「触媒的な好奇心」は 人生を肯定する万能薬なのです 彼ら自身だけでなく 周りの全員に効き目があります 世代間で行われる即興は 音楽や芸術では知られています トニー・ベネットとレディー・ガガや ウィントン・マルサリスと 若手ジャズミュージシャンのコラボなどです ビジネスでは こうした即興性のある関係を 「相互メンター制度」と呼んだりします ミレニアル世代のDQを X世代と ベビーブーム世代のEQに融合するんです

私はこうした世代間の互恵を ローラや 優れたデータサイエンスチームとの仕事で 経験することができました Airbnbのユーザー間で 行われる評価制度を 作り直し 進化させた時のことでした ローラの分析的な思考と 私の人間中心の直観を使いました アルゴリズムと人の知恵を掛け合わせた この完璧な錬金術を用いて 私たちは 即時フィードバックループを 開発することができ ホスト側がゲストのニーズについて 理解を深めるのに役立ちました ハイテクとハイタッチ(人的触れ合い) の融合です Airbnb社で 現代の年配として もう1つ学んだのは 私の役割は 表向きは実習生でありながら 個別では助言者だということです サーチエンジンは答えをくれる という意味では素晴らしいですが 賢く分別のある指導者は 的確な問いを投げかけてくれます Googleには 少なくとも今のところ 人の心と頭の絶妙な調和といった ニュアンスは理解できません しばらくすると 驚いたことに たくさんの若いAirbnb社員が 私のところへ来て 個人的な助言を求めるようになりました ですが実際は お互いに 助言し合っていることが多かったのです

要するに CEOブライアン・チェスキーは 私の業界知識を見込んで招いたのに 実際に私が提供していたのは 長年培った知恵だったのです もう「ナレッジワーカー(知識労働者)」 という言葉を使うのをやめ 「ウィズダムワーカー(英知労働者)」に 替えるべきかもしれません 今や 職場に5世代が共存する時代です それぞれが独立した孤立主義国であるか のように振舞うこともできますが 世代間の境界線に橋を架ける方法を 探し始めることもできるんです そして知恵が流れる仕組みを 切り替える方法を考えるべきです そうすれば年配と若者の間で 知恵が双方向に交流するようになります

これをみなさん自身の人生に 応用するには? 個人レベルでは 誰に手を差し伸べて 相互メンター的な関係を築くか? 組織レベルでは いかにして 世代間の知恵の流れを育む環境を 作り上げる事ができるか? これこそが 新しいシェアリングエコノミーです

ありがとうございました

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このプレゼンテーションについて

これまでにはありえなかったが、今や1つの職場に5世代が共存している、と起業家チップ・コンリーは言います。もし世代間の隔たりを取り払い、皆が共に働く形を意識したらどうなるでしょうか? このトークでは、社員の年齢に幅のある会社がいかに強力であるか、そして、職場で異なる世代が互いに助言し合い、年配と若者間で知恵が双方向に流れるようにする必要性について、コンリーが分かりやすく説明します。

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