他人同士の集まりをチームに変える方法(13:07)

エイミー・エドモンドソン(Amy Edmondson)
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対訳テキスト
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2010年8月5日 チリ北部のサンホセ鉱山で 大規模な崩落が発生し 地下800mに 33名が取り残されました 実にエンパイアステートビル2個分の深さです しかもそこは 世界で最も固い岩盤の下でした 鉱夫たちは 何とかして緊急用の 狭い避難所に辿り着いたものの そこは 猛烈に暑く 不潔で 2人が10日間生きられる程度の 食料しかありませんでした 地上の専門家は ほどなくして 助け出す方法がないことを悟りました 彼らが生きているうちに これほど固い岩盤を あの深さまで 掘削する技術は どこを探してもありません 避難所の正確な位置は定かではありません 鉱夫たちの安否さえも分かりません 誰が指揮するのかも はっきりしません しかし それから70日以内に 33名全員が地上に生還したのでした この話は「チーミング」の力を示す 注目すべき事例です

「チーミング」 とは何でしょう それは 即興的なチームワークのことです 人が互いに連携し 協力することです 専門分野 距離 タイムゾーン 何であれ あらゆる境界をまたがって 仕事を完遂することです

好きなスポーツチームを思い浮かべてください これはチーミングとは違います スポーツチームでは 全員で協力し 勝利に導くスーパープレーをします スポーツチームが勝てるのは練習するからです しかし練習できる条件は メンバーが変わらないことです チーミングというのは そうですね スポーツチームを考えると 従来のチームの定義が分かります 固定的で境界がある 程よく少人数のグループで 共通の目的を達成するにあたり 相互に依存関係にあるもの チーミングとは 公園で作った 急ごしらえのチームだと考えてください 練習を積んだ正式なチームとは対照的です 優勝決定戦ではどちらが勝つでしょうか 答えは明らかですよね では なぜ私は チーミングを研究するのでしょうか それは この方法で働く人たちが 今 増えているからです 年中無休 24時間体制のせわしない グローバルな事業活動 半端なく変化の激しいスケジュール 細分化が進む専門分野 仕事を遂行するために 常に様々な人と協力する必要のある人たちが 増えてきているのです 固定的なチームを組む余裕などありません そうする余裕があるのなら ぜひやってください しかし やるべき仕事がどんどんと増える昨今 そんなことは 到底無理です 病院などは良い例です 私は長年 病院で調査を続けてきました 病院は年中無休ですね そして 患者は一様ではありません 一人ひとり違った複雑な個性があります 入院期間を通して 患者1人につき 平均60人のスタッフが世話をします 彼らは シフトも担当業務も違いますし 専門分野も異なります お互いの名前すら知らないかもしれません それでも 良い治療のために 連携しなければなりません そうしないと 結果は悲惨なものになりえます

もちろん チーミングには いつも生死がかかっているわけではありません アニメ映画を作るのに何が必要でしょうか 賞を取るようなアニメ映画です 私はディズニー・アニメーション・スタジオを 訪れる機会に恵まれ そこで 900人を超える 科学者 アーティスト 脚本家 コンピューター科学者を対象に 調査しました 彼らは 常に変化する チーミング体制を組んで 『アナと雪の女王』のような 素晴らしい作品を創り出していました 彼らはひたむきに協力するのです 常に違う面々のグループで 次の予測が立たない状況で です 緊急治療室で患者の処置をすることと アニメ映画を制作することは 明らかに 全く異なる仕事です しかし 表面上の違いはあれど 多くの共通点があります その時々に応じて 必要な専門性が違います 決まった役割はなく 決まった成果物もありません 多くの前例の無いことに 取り組むことになるし それは固定的なチームでは不可能です

これは簡単なことではありませんが 先ほど言ったように この方法を必要とする機会は増えています だから 理解する必要があるのです この方法が 最も必要とされるのは 複雑で見通しの立たない仕事をする時と 大規模な課題を解決する時です ユニリーバのCEO ポール・ポールマンは 上手く表現しています 「今日 我々が直面する課題は とても巨大かつ困難であり 単独で解決できないことは明らかだ だからこそ他人を招き入れる 謙虚さが必要だ」 食糧難や水不足を 個人で解決することは不可能です 単独の企業でも無理です 単独のセクターでも無理でしょう だから 手を取り合って 大規模なチーミングを行うのです 壮大なチーミングです

スマートシティを 例にとってみましょう こんな表現を見たことが あるかもしれません 複合用途デザイン 省エネルギービル スマートモビリティ 緑豊かな 住みよい 素晴らしい街 表現する言葉も 構想もあります もちろん需要もあります 技術もあります 2つの大きな潮流があって まずは都市化 地球全体で急速に都市が広がっています そして 気候変動です これらの流れは 都市設計におけるイノベーションが 不可欠だと示しています 世界中の様々な場所で 人々が一丸となり 緑豊かな 住みよいスマートシティを 設計しようとしてきました 壮大なイノベーションに向けての挑戦です

これを 深く理解するために スマートシティ関連ソフトウェアの あるスタートアップ企業を調査しました 彼らは不動産開発会社と協業し 民間の技術者 市長 建築家 大工 テクノロジー企業を巻き込んで 試験的なスマートシティを ゼロから創り出すことを目標に掲げました さて プロジェクト開始から5年後 大きな前進はありませんでした 6年経っても着工すらしていませんでした どうやら 業界を超えたチーミングは 非常に困難だったようです そうして― 私たちは 思いがけずに 「職業的な文化衝突」と私が呼ぶ現象を 見出しました ソフトウェア技術者と不動産開発担当者の 考え方は違います 全く違っています 価値観も 時間感覚も違います 時間感覚は重要ですね そして 専門用語も使う言葉も違います ですから いつも意見が一致する訳ではありません これは大半の人が認識している以上に 大きな問題だと思います 実際には 職業的な文化衝突は 望む未来を実現するのに 大きな障壁になります ですからそれは 私たちが理解し 解決法を探るべき課題なのです 特に大規模なチーミングを成功させるには どうしたらいいでしょうか これこそ 私が何年にもわたり 多くの現場で 研究課題として 取り組んできた問題です

その答えを 覗いてみる前に 話をチリに戻しましょう チリでは10週間にわたって チーミングが行われました 数百人に及ぶメンバーは 職業が違えば 所属会社もセクターも 国籍さえ違いました この経過中に 彼らは多くのアイデアを試しました 試しては 失敗し 日々 惨敗を繰り返していました それでも めげずに我慢強く 歩みを続けたのです まさに そこには 真に困難な壁に直面しながらも 謙虚であり続けた彼らの姿があり 好奇心を持ち続けた姿がありました つまり多様な個性 特に様々な専門性や国籍を持つ全員が それぞれの持ち寄る考えに 心から興味を示しました そして 彼らはリスクを恐れずに 使えるアイデアをすぐに学ぼうとしました ついに 17日後に 全員からアイデアが集まりました 政府から救出の指揮を任命された 優秀な鉱山技師― アンドレ・ソウガレットからも NASAからも チリの特殊部隊からも 世界中のボランティアからも アイデアが集まりました 私を含め 大勢の人々が遠くから見守る中 彼らは苦労しながらも 岩盤を少しずつ掘っていき

17日目に 避難所まで開通させたのです 本当に特別な瞬間です ほんの小さな岩の隙間から 無数の試行錯誤を繰り返して 開通させたのです そして それからの53日間 この狭いライフラインを通して 食料や医薬品が運ばれ 交信が行われました 一方 地上の人々は その53日間 チーミングを続け より大きな穴をあける手段を模索し 同時にカプセルの設計を試みました これがカプセルです そして69日目 22時間以上に及ぶ 労を惜しまぬ救助作業の末 鉱夫たちを1人ずつ なんとか地上に引き上げたのです

彼らはどのように 職業的な文化衝突を克服したのでしょうか 一言で言うとリーダーシップです もっと具体的に言いましょう チーミングが上手くいくときは 必ず あらゆる階層において 正解が分からないことを はっきり自覚しているリーダーがいるのです これを「状況対応型の謙虚さ」と呼びましょう 適切な謙虚さです 方法が分からないのです そして 必ずメンバーは 好奇心にあふれています この状況対応型の謙虚さと 好奇心が組み合わさると 心理的安全性が生み出されるのです これにより 他人に対し 思い切った行動ができるのです だって よく知らない人に対して 発言したり 助けを求めたり 的外れかもしれないアイデアを 提案したりするのには 抵抗がありますよね それには心理的安全性が必要です 私が「基本的な人間の難題」と呼ぶものを 彼らは乗り越えたのです 知っていると思い込んでいる限り 学ぶことは難しい 残念ながら 人間は生来 知っていると思い込むようにできています だから 自分に思い出させる必要があります 好奇心を持とうと 他人のアイデアに興味を持つのです 興味を持つことで 解釈に寛大さが生まれるのです

しかし 他にも障壁があります ご存知ですよね 知らなかったら ここにいないはずですから 映画『ペーパーチェイス』からの引用で 説明しましょう ちなみに これがハリウッドの考える ハーバード大の教授の姿のようです 判断は皆さんにお任せします この有名なシーンで 教授は新入生を迎え入れ こう言います 「左右を見てみなさい どちらかは来年には いないだろう」 新入生はどんな風に受け取ったでしょう 「やるかやられるか」 自分の成功のためには 他人を蹴落とすべし 今では こんな風に新人を迎える組織は 多くないと思いますが こうした煽り文句を持ち込む人は まだまだ 多いです やるかやられるか 軽率に他人を敵とみなす限り 協力することは 非常に困難です

だから この障壁も克服する必要があります それができれば 素晴らしい結果になるかもしれません アブラハム・リンカーンは 言いました 「その男があまり好きではない 故に 彼をもっとよく知る必要がある」 どうですか その人を好きではないのは 彼をよく知らないからだ 驚きですよね まさに これこそが 効果的なチーミングを実現する 考え方です 閉じた世界の中で 物事を完結させることもできます しかし 一歩引いて その外の世界に手を伸ばせば 奇跡が起こるかもしれません 鉱夫たちを救出したり 患者を助けたり 美しい映画を作ることができるかも

そのために これ以上の助言はないでしょう 左右を見てみなさい 周囲の人々の 比類なき才能や技能 希望を いかに早く見出せますか 逆に 自身のアイデアを いかに早く 周囲に伝えることができますか 力を合わせて 夢見る未来を築きあげるという 誰も1人では成し遂げられないことを 実現するためには これこそが必要な考え方です

ありがとうございました

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このプレゼンテーションについて

ビジネススクールの教授であるエイミー・エドモンドソンは「チーミング」の研究をしています。チーミングとは前例のない緊急の、あるいは非日常的な問題を解決するために、(たいていは一時的に)人々が迅速に集まることです。エドモンドソンが、2010年にチリで地下800メートルに取り残された33名の鉱夫を見事に救出した事例といった即興的なチームワークの在り方を振り返りながら、他人同士の集まりを、速やかかつ的確に考えをまとめ、困難な課題に機敏に対応できるチームに変えるための要素を共有します。

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