資本主義はイデオロギーではなくオペレーティングシステムである(06:11)

ブー・スリニバサン(Bhu Srinivasan)
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対訳テキスト
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資本主義とは何でしょう 資本主義は 根本的な話 複数の市場が関連して成立します レモネードを売る市場があれば レモンを売る市場があり レモンを輸送するトラックを 売る市場があり トラックに入れる燃料を売る市場も レモネード屋を建設する木材を 売る市場もありです ただ 資本主義とはもちろん ご存知のとおり 喜ばしい意味 非難の意味 両方で使われる言葉であり 崇められるか 酷評されるかの どちらかです 今日は 資本主義に対して こんなに賛否両論があるのは 現代の資本主義が大いに 誤解されているためだというお話です

私が思うには 資本主義はイデオロギーとして 捉えるべきではなく OS(オペレーティングシステム)として 捉えるべきなのです iPhoneを例に挙げると iPhoneはハードウェアと ソフトウェアが統合されたものです アプリとハードウェアです ここで ハードウェア= 人の周りに物理的に存在するもの アプリ=商業活動 つまり ものを創り出すエネルギー と 考えてください その2つの間にあるのがOSです ハードウェアが改良される一方で ソフトウェアも改良され OSはそれに対応しなくてはなりません パッチを当て 更新する必要があり 新バージョンも必要になります 全てが共存できるように 開発していかなけれなりません OSは常に進化を続けないと 技術革新に対応できません

ですから 根本的な話 資本主義をOSと考えると 資本主義の従来の擁護者が持つ観念から イデオロギー的な表現が 切り離されます ですが合衆国憲法ですら その条文を読んでみると 起草者たちは 言論の自由 信教の自由 出版の自由 を定めた修正第1条よりも先に 特許や著作権について 考えていたことがわかります 芸術と科学技術の振興における 政府の役割について 先に議論したのです だからGoggleという検索エンジンを 明日 立ち上げることはできないのです

(笑)

Googleが「G」を使う権利を 所有するわけではないのですが 混乱を招くからです 所有権でさえ 元来 曖昧さをはらむものだということです さらに話を進めます 1900年頃にもなると 違う種類の所有権が出現します

例えば1900年に 40万平方キロメートルの土地を 米国中西部のどこかに 持っていたとします 自分の所有地と 隣との境界には柵があり 目視により簡単に確認できます ではお聞きします 自分の所有権は 上空のどこまで及ぶのでしょう? 300メートルまでですか? 1,500メートル 3キロメートル? 高さなど関係ありません 熱気球のような新奇な道具でもなければ 人間は飛ぶことが できなかったからですが

3年も経たずに 飛べるようになり すると突如として 高さが重要になり 自分の土地の範囲が 上空300メートルまでなのか 1,500メートルか3キロまでか 第三者に決めてもらわなくては ならなくなりました まさに実際に起こったことです 今から5年 10年後に Amazonが荷物を 配送車からあなたの家を飛び越えて 隣の家に配達したいとなった場合 所有地の範囲を 決めなければならなくなります 「1.5メートルまで? 3メートル? 15メートル? 30メートルまで? どこまでだろう?」 どんなイデオロギーをもってしても 自分の所有権がどこまで及ぶのか 説明できません これはOSの領域なのです

同じようなことが 自動車の分野でも起こるでしょう ライト兄弟が飛行原理を解明した数年後 人はどんどん車を使うようになり すると 突如 規制システム つまり オペレーティングシステムに いきなり消費者の安全を考えて パッチを当てなければならなくなりました 車を使う人が 馬や歩行者や 路面電車等に 危険をもたらしているとして 突如 車を運転する者には 免許証の取得 視力検査 自動車の登録 制限速度 交通ルールの遵守が 義務付けられ そうすることで馬や歩行者が 車と共存できるようになりました 新しいシステムには 後方互換性が求められ 要は 既存のものに対応する 必要があったということです これも あと5年か10年で 自動運転車で 同じことが起こるでしょう 人が運転する車と共存するためです

なぜこれが大事なのかというと 今後10年の間に ドローンや自動運転車とは 次元の違う出来事が起こり 世界で最も重要な経済 つまり世界一の経済大国が 共産主義者が統治する国 という事態になるからです 中国は資本主義制度の使い方に 秀でているようです この事実は根本的な問題をはらみ 米国にアイデンティティの危機を もたらすでしょう 長きにわたり 自由市場は 言論の自由や出版の自由 信教の自由といった権利と 不可分のものだったからです それが急に 引き離されようとしています 実際にそうなったとき 民主主義 つまり 大衆の雑多な声は 資本主義の妨げになると 見なされるかもしれません 「小さな政府」であろうとするどころか なりふり構わない国であれば 西洋社会を一挙に追い抜けそうな 革新的技術であれば ドローンに電気自動車 自動運転車など 何に対しても あっという間に規制を整えてしまう 可能性があるのですから

このような考え方は 米国民の知識経験からすると異常なものです だからこそ米国の資本主義を イデオロギーではなくOSとして 考えることが重要なのです 資本主義をイデオロギーと考えると 良い政治体制が 極めて悪い政策を 講じる場合があり得るからです 市場の動向と大衆の意見 そこに得票争いが絡んで 発展を妨げる恐れがあります

今後何年かにわたって 景気が政治に左右されるにしたがい 米国の民主主義は 資本主義や現代という時代がもたらす 困難に打ち克つことでしょう 政策立案者に考えていただきたいのは イデオロギーを 経済から引き離すことと どうしたら 良い政策が 最終的に良い政治になるかということです

ありがとうございました

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このプレゼンテーションについて

ブー・スリニバサンは、資本主義と科学技術の進歩の関係を研究しています。スリニバサンは、資本主義を強固で不動のイデオロギーと考えるのでなく、オペレーティングシステム(OS)と考えるべきだと提案します。例えば目前に迫るドローンでの配達サービスの開始のような技術革新に対応して更新する必要があるというわけです。この簡潔で進歩的なトークで、自由市場の過去と未来、そして米国型資本主義のアイデンティティに起こりうる危機について詳しく見ていきましょう。

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