なぜ人はロボットと感情的繋がりを持つのか(11:51)

ケイト・ダーリング(Kate Darling)
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対訳テキスト
講演内容の日本語対訳テキストです。
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10年くらい前のことですが 赤ちゃん恐竜ロボットを 逆さに持ってみてと友達に言ったんです 「プレオ」というオモチャを手に入れ はしゃいでいました ロボットは昔から 大好きでしたので このロボットには いろいろすごい機能があり モーターや 接触センサーや 赤外線カメラなんかに加え 傾斜センサーが入っていて 体の向きが 分かるようになっていました そして逆さにしてやると 泣き出すんです これはすごいと感心し 友達にも見せてやろうと思ったわけです 「ちょっと これの尻尾を持ってみて どうなるか」 そして このロボットが もがき泣く姿を見ていましたが 少しして なんか嫌な気がしてきて 「ねえ もういいでしょう 下に置いてあげて」と言い ロボットが泣き止むように 撫でてやりました

私にとって 奇妙な体験でした 当時の私は そんなに母性的な 人間ではありませんでしたから でも9ヶ月前に 私も母親になって 逆さに持つと 赤ん坊も もがきまわるのが分かりました

(笑)

このロボットに対する 自分の反応が興味深かったのは その機械的な仕組みは 理解していたのに 優しくしてあげなきゃと 感じたからです その時の観察が この10年追い続けてきた 好奇心に火を付けたのです なぜ自分はこのロボットを いたわったのか? ひとつ分かったのは このロボットへの対応というのは うちの居間で起きた 気まずい瞬間にとどまるものではなく 生活の中にロボットがますます 組み込まれつつある世の中で このような感覚は 様々な結果を もたらしうるということでした 私だけじゃないことが 分かったんです

2007年にワシントンポスト紙が 米軍の実験している 地雷処理ロボットについて報じました それはナナフシみたいな 姿をしていて 脚を使って地雷原を歩き回り 地雷を踏むごとに 脚の1つが吹き飛ばされますが 歩き続けて地雷を爆発させていく というものでした 責任者だった大佐は 実験を中止させました 傷ついたロボットが地雷原を 這い回るのを見ているのは非人間的だからと 筋金入りの軍人や 私みたいな人間に そういう反応をさせたものは 何だったのか?

SFや大衆文化によって こういったものを擬人化することに 馴れているというのもありますが これはもっと根が深いもので 生物学的に私達は 自律的に動くものに対し 意思や生命を見ようと するようにできているんです 人がロボットを生き物のように 扱うのはそのためです こういう爆発物処理ロボットに 名前が付けられ 勲章が授与され 礼砲付きの葬礼が 行われたりします 相手が単純な家庭用ロボットでも 人はそう反応することが分かっています 掃除ロボットの ルンバでさえも

(笑)

ただの円盤形をしていて 床の上を動き回って掃除をしますが 自分で動き回る というところが 持ち主に名前を付けさせたり ソファの下に引っかかっているのを 可愛そうと思わせたりするんです

(笑)

そういう反応を引き起こすべく ロボットをデザインすることもできます 目や顔を付けたり 人が無意識に 感情と結び付けるような 動作をさせることによって そういった現象について研究する 「ヒューマン-ロボット・インタラクション」 という分野もあります たとえばスタンフォード大の研究者が 発見したことですが ロボットであっても 陰部に触れるよう言われると 人はすごく気まずく 感じるんです

(笑)

多くの研究から こういう生き物のように 見えるロボットが出す合図に対し 人間は作り物だと 知りながら 反応することが 分かっています

私達はロボットが至るところに いるような世界へと向かっています ロボット技術は もはや工場の中だけのものではなく オフィスや家庭へと 進出しています そういった場所へと 入ってくる 知覚し 自律的に決断し 学ぶことのできる機械に対して 最善のアナロジーとなるのは 動物との関係かもしれません 数千年前に人類は 動物を家畜化するようになり 労働や戦争のため また遊び相手として 飼い慣らしてきました 歴史を通して ある動物は道具や商品として扱われ ある動物は 思いやりをもって扱われ 社会の中で 人間の仲間としての 位置を与えられました ロボットもまた同じように取り込まれて いくというのは ありそうなことです

もちろん動物は生きており ロボットは生きてはいません ロボット研究者と一緒に 働いている経験から言えますが 感情を持つロボットができるのは 随分先の話です でも人間はロボットに同情し そこが重要なんです ロボットを社会に 取り込んでいくのであれば 人はロボットに対し 他の機械とは違った扱いをすることを 理解しておく必要があります たとえば兵士が 一緒に働くロボットに 愛着を抱く場合などには 非効率さや危険をもたらす 可能性もあります でも他の場合には ロボットへの感情的な繋がりを 育むことが 有用であり得ます すでに素晴らしい実例が 知られています たとえば自閉症の子供が ロボット相手に これまで見られなかった 反応を見せるとか 教師がロボットを使い 子供の学習で 新たな結果が得られているとか またこれは 子供に限った話ではなく 医療現場でロボットが 医師や患者の助けに なり得ることが示されています

これは「パロ」という 赤ちゃんアザラシのロボットで 養護施設や認知症患者のケアに 使われていて 結構前からあるものです よく覚えていますが 何年も前にパーティーで このロボットの話をしたところ 相手がこう言ったんです 「それひどくないですか 人間じゃなくロボットに 世話をさせるなんて信じられない」 これは ごく一般的な反応で まったくもって 正しいと思います もしそうなら 酷い話ですから でもこの場合 人間がロボットに 置き換わるわけではありません 置き換わるのは 動物介在療法で 本物の動物が 使えない場合に ロボットを使うんです 人はロボットを機械よりは 動物のように扱いますから

このロボットに対する感情的な 繋がりが分かっていれば ロボットがより身近な存在に なったときに起きる問題も 予期できるように なるでしょう たとえば子供の テディベアロボットが 私的な会話を録音するのは 良いのかとか セックスロボットがApp内課金を促すのを 認めて良いのかとか

(笑)

ロボットと資本主義の 組み合わせには 消費者保護やプライバシーの問題が からんできますから

でも機械に対する人間の振る舞いが 問題になりうるのは そういう理由ばかり ではありません あの赤ちゃん恐竜ロボットでの 最初の経験から数年後に 私は友人のハネス・ガッサートと ワークショップを開きました 赤ちゃん恐竜ロボットを 5体用意し それぞれ5つのグループに渡し 名前を付けて 1時間くらい それで遊んでもらいました それからハンマーと 斧を出して ロボットを痛め付けて 殺すように言いました

(笑)

これは予期していたよりも 少しばかりショックを与えたようで 参加者の誰も 赤ちゃん恐竜ロボットを 叩こうとさえしません それでもっと後押ししなければ ならなくなって 言いました 「他のチームのロボットを壊せば 自分のチームのロボットは壊さなくていいです」

(笑)

それでもうまくいかず みんな手をこまねいています 最後には こう言いました 「誰かが斧を手に取って どれか1つに振り下ろさないなら ロボットをみんな壊します」 それで1人が立ち上がって 斧を手にし ロボットの首に 斧を振り下ろすと 部屋にいたみんなが ギクッとしました そして半分冗談 半分真剣な しばしの沈黙が 倒れたロボットに 捧げられました

(笑)

すごく面白い経験でした これは対照試験では ありませんでしたが 後に私がパラッシュ・ナンディーと シンシア・ブリジールと一緒に MITで行った研究に 繋がりました 実験室に来てもらった人たちに この昆虫みたいな 生き物のように動き回る HEXBUGを潰してもらいました 可愛くて惹かれる ようなものではなく もっと簡素なロボットを 使ったんですが 共感力の強い人ほど HEXBUGを潰すことに ためらいを感じることが 分かりました

これはちっぽけな研究ですが ずっと大きな研究領域の一部で 人の共感傾向とロボットに対する 振る舞いの間には 繋がりがあることが 示されつつあります 来るべき人とロボット共生の 時代への疑問は 「人はロボットに共感するのか?」 ではなく 「ロボットは人の共感性を変えられるのか?」 ということです たとえばロボット犬を 蹴らないよう 子供をしつけることに 効果はあるのか— 物を大事にする という点だけでなく 本物の犬を蹴るような人間に ならないようにするために

これも子供に限ったこと ではありません 暴力的ゲームの問題と同じに聞こえますが まったく別次元の話で 画面上のイメージよりも 形あるものに対して 私たちはより強く 反応するからです 特に生き物に似せてデザインされた ロボットに対して 暴力的に振る舞うのは 暴力性に対する 健全なはけ口になるのか それとも暴力性を 強めることになるのか? 分かりません でもこの問いへの答えは 人間の行動や社会規範に 影響する可能性があり ロボットに対して何ができ 何ができないかという ルールに繋がる 可能性があります ちょうど動物虐待防止法のように— ロボットは何も感じないとしても ロボットに対する振る舞いは 私たち自身に影響するかもしれないんです そして法律を変えることに なるかどうかにかかわらず ロボットは人間についての 新たな理解をもたらすかもしれません

この10年で私の 学んできたことの多くは テクノロジーに 関することではなく 人間の心理 共感 他人との関わり方についてです 子供がルンバに対して 優しく接するとき 兵士が戦場でロボットを 救おうとするとき 人々が赤ちゃん恐竜ロボットを 傷つけることを拒むとき ロボットはモーターと歯車と プログラムだけのものではありません 私達自身の人間性の 反映なのです

ありがとうございました

(拍手)

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このプレゼンテーションについて

感情を持つロボットはまだまだできそうにありませんが、人間は既にロボットに対して感情を抱いており、そのような本能的感覚は様々な結果を引き起こしうると、ロボット倫理学者のケイト・ダーリングは言います。生物学的に人間はロボットに意思や生命を見るようできていて、それが人間自身のより深い理解に繋がりうることを学びましょう。

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