私の生死観を変えた父の認知症(7:01)

ベス・マローン(Beth Malone)
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対訳テキスト
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私はずっとあることを考えていました 父を殺してしまいそう 姉に電話しました

「聞いて ずっと考えていたんだけど パパを殺すことにした パパをオレゴンに連れて行って ヘロインを手に入れて パパに渡そうと思ってる」

私の父は 前頭側頭型認知症 ― FTDを患っています 50代60代の人がかかる病気 症状は多彩です 病気にかかると その人の人格が すっかり変わってしまったり 疑り深くなったり 暴力的になることもあります 父は10年患っていましたが 3年前に 症状が悪化して 私たちは父を自宅から 引越させなければならなくなりました それは 私が育った家であり 父が自分の手で建てた家でした 逞しくてカッコよくて ファルセットの歌声を持つ私の父が 24時間介護の施設に 移らねばならなくなったんです 父はまだ65歳でした

最初 母と姉と私は 間違いを犯して 父を一般の老人ホームに入れました それは本当に魅力的な施設で 深々としたカーペットが敷かれ 午後にアート教室があり ダイアンという名の犬もいました あるとき 私に電話がかかってきました

「マローンさん お父様を拘束しています」

「何ですって?」

「えっと お父様は ナイフで みんなを脅したんです そして カーテンを引きはがし 窓から鉢植えを投げ捨てようとしました その上 女性を全員 車椅子から引きずり下ろしたんです

「女性 全員ですか?」

(笑)

「なんて 無茶なことを」

(笑)

父がそこを追い出されたあと 私たちは 様々な州営の施設に 父を入所させましたが 最終的に 認知症を持つ人専用の 治療センターを見つけました 最初 父はそこを気に入ったようでしたが しばらくすると 父の状態は悪くなり ある日私がお見舞いに行くと 父は つなぎの服をきて 地べたに前かがみに座っていました 背中にファスナーのついた服でした 父が それを引っ張って なんとか脱ごうとするのを 私は小一時間ほど見ていました 実用性を考慮したであろうその服が 私には拘束衣のように見えました 私は堪えられなくなって 父をそのままにそこを離れました 元は父のものだった トラックの中で うずくまるようにして お腹の底から 絞り出すように 泣きました まさか私の父が 若い頃の私にとっての理想の男性が 私の本当に愛する友が こんな状態でもまだ生きる価値を 感じているとは思えませんでした

私たちは 生産性を優先するよう プログラムされています だから ある人が — この場合は 理想の男性ですが もう 私たちの期待するような そして 本人が考えるような 生産的な人物でなくなったら 何の価値が人生に残っていると 言えるでしょうか? その日 トラックの中で 私には 父が拷問を受けていて その体は 拷問を与えるための器としか 思えませんでした 父をその体から出してあげなきゃ 体から出してあげなきゃ 父を殺そう —

姉に電話をします

「ベス」と姉 「自分が父親殺しだという思いを抱えながら 残りの人生を生きるなんて 嫌でしょう? それに逮捕されると思うよ だって 父さんには 容認の 意思表示ができないんだから それに ヘロインの買い方も 知らないくせに」

(笑)

確かに知らない

(笑) 実際には 父の死について たくさん話しあいました いつそうなるか? どんな死に方をするのか? でも みんなが元気なうちに 死について 話せたら良かったのにと思います 私の最高の死に方とは どんなものだろう? あなたの最高の死に方は どんなものだろう? でも私の家族は そうすることに 考えが及びませんでした そして姉の言うとおりでした 私は 父をヘロインで 殺すわけにはいきません でもあの体から 解放してあげる必要はありました

だから私は霊媒師を訪ねました 牧師さんや 支援グループも 訪ねましたが みんな言うことは同じでした 「愛する人のことが心配だと ご家族はワラにもすがる思いですからね でもこう言ってあげなさい ―大丈夫だよ良いと思った時に 逝っていいよ」

私は父の面会に行きました 父はつなぎを着て 地べたに前かがみに座っていました 父は 私の向こうにある何か 地面でも見つめているようでした 私は父にジンジャーエールを渡して とりとめのないことを話し始めた途端 — 話している最中に父が ジンジャーエールでくしゃみをしたんです くしゃみで 父の体が はね上がり 少しだけ 父が息を吹き返したみたいでした それから 父は飲んではくしゃみをして 息を吹き返すのを何度も繰り返して やっと止まりました すると聞こえました 「エヘヘヘヘ へへへへ… これは愉快だ 本当に愉快だ」

父は目を開けて 私を見ていました 私が「お父さん」と言うと 父も「やあ ベス」と言いました 私は口を開いて こう言おうとしたんです 「パパ 死にたかったら 死んでもいいよ 私たちは大丈夫だからね」 でも 口をついて出た言葉は 「パパ! 寂しくて会いたかった」 すると父も「私もだよ」と言いました そこで私は取り乱してしまい その場にうずくまりました

私は父と一緒に 座りこみました だって 久しぶりにやっと 父が はっきりした様子だったからです 私は 父の手を記憶に刻みました 父の体に まだ父の心が残っていることに とても感謝の気持ちでいっぱいでした その瞬間 私は気づいたんです 私が全てを背負いこまなくて良いのだ 私は 父の主治医ではないし 母親でもないし 父の神様だということも断じてない そして多分 父と自分にとって 一番役に立つことは 父と娘の役割に戻ることなんだと

だから私たちはその場に座り かつてのように 静かに穏やかに過ごしました 生産性のある人なんていない 私たちは2人とも まだ強い

「じゃあ パパ 行くね 明日も会いに来るからね」

「分かった」と父 「ねえ ここはとても良いハシエンダ(農園)だね」と

ありがとうございました

(拍手)

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このプレゼンテーションについて

暖かく、美しく、ベス・マローンが、前頭側頭型の認知症で悪戦苦闘した父親のことを、パーソナルストーリーとして語り、その経験で自分の死に対する(そして生に対する)考え方がどう変わったかということを語っています。お互い成行きのままに心の平穏を見出すこと、そして父を思う娘の愛情について語った、心を動かされるトークです。

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