雲は気候変化の解明までの時間稼ぎに役立つのか?(13:07)

ケイト・マーベル(Kate Marvel)
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対訳テキスト
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気候科学の研究者の私は 天気のことが大嫌いです 年中天気の良いカリフォルニアで ずっと過ごしてきたので 天候のことなど気にしなくてすむ オプション扱いがいいなと思います

(笑)

雲を体験したいとも思わないし ましてや研究の対象にしたいとも思いません ところが私が行く処どころに 雲が付きまとってくるのです

雲は気候科学において厄介な存在です 地球が温まる過程で 雲がどう反応するかは未知の分野ですが 実はその未知の領域に 希望が隠されているかもわかりません ひょっとして そう もしかしたら 雲は温暖化の進行を遅らせることで 我々がしっかり対応できるまでの 時間稼ぎに役立つかもわかりません 今の時点でそうなれば 大変都合がいいことなのです 雲が地球を守ることができるのであれば 少しぐらい曇りの日が増えても 私はかまいません

絶対的に確かなことは 二酸化炭素は温室効果ガスであり 多量に排出されており 地球の温暖化が進んでいることです 論議の余地なし 以上 それでも毎日 職場へ研究しに行きます それは何故かと言うと 実は気候変化のことで まだ分かっていないことも沢山あるからです とりわけ一つ まだ未回答なのが この問題の原点になることです 暑くなるのはわかっていても 具体的にどの程度暑くなるのか についてはまだ分かりません これはタイムマシーンを 提供してくれる人がいれば 簡単に答えられるはずの質問です ところが 正直なことを言うと 私がタイムマシーンを持っていたとしても 歴史のこの時点にいたいとは思いません そこで将来を見通したいと思うのであれば コンピューター・シミュレーションの出力に 頼るしかありません― 例えば この気候モデルのようなものです

私の研究分野では インターネット上で出会う 沢山のとても「素敵な」人達は皆 気候モデルは 全く間違っていると 言い張ります それに対して私が言いたいのは 「冗談でしょ! 本気? 私は気候モデルの落ち度を探す ことで給料をもらっているのよ」 モデルに完璧性は求めていません そのかわり役に立ってほしいのです 考えてみてください 現実の全てを再現することができる コンピューター・シミュレーション それは気候モデルではありません それは『マトリックス』の世界です モデルは水晶の玉のような予言はできません あくまでも研究のツールであり モデルの誤りから習うことも多いのです

例えば ー いくつかの気候モデルは これまで現実に起きた温暖化を ほぼ捉えることはできます ところが今のままの社会活動を継続する シナリオを想定して 今世紀の終わりまで早送りしてみると いくつかの気候モデルは もはや合致しません もちろん全てが温暖化を示していますが これは基本的な物理的問題です ところが一部のモデルは 破滅を予測しますー 今までより5倍レベルの温暖化です 一方 他のモデルはまさに もっと冷静な予測をしています

それでは何故 全ての気候モデルで 温暖化の到達点が一致しないのでしょう? その大きな理由は 雲が将来どう影響するかに 一致した意見がないからです それは 私と同じように コンピューターも 雲が厄介だと思っているからです コンピューターが雲を嫌がる理由は 雲が同時にとても大きなものでも とても小さいものでもあるからです 雲は 微小な水滴 或いは氷晶が 小さな粒子の周りに 凝集することで作られます 一方 地球表面の 3分の2を覆う大きさにもなります 雲のモデルを正確に作るには 全大気中における 全ての水滴やダスト微粒子の動きを 知る必要がありますが それをこなせるほど強力なコンピューターは 存在しないのです そこでその代わりに妥協を強いられます ズームインして細かい部分の 精密度を上げることはできますが 世界全体でどうなるかは 全く分かりません 又は 細かい部分の実体を犠牲にすれば 大局的な状況を理解することができます 唯一の正解も 完璧な方法もないので 異なる気候モデルはそれぞれに 違う部分に焦点を当てます

コンピューターが雲の分析に手こずることは 本当に残念なことです 雲は地球の温度を調整するのに 重要な役割を果たすからです 全ての雲がなくなってしまうと 決定的な気候変化を体験する はめになります 雲がなくなると 地球はもっと暑くなると思いますか それとも寒くなると思いますか? 実は両方の現象が現れます

本音を言うと 私は雲の識別は苦手です 雲のないのが好きです 雲には多彩な形と大きさが あることぐらいは知っています このような厚い下層雲は 太陽光を妨ぐのに有効で バーベキューを台無しにします この巻雲のような繊細な上層雲は 日光の大部分を通過させます 晴れの日はどの日も同じようですが 曇りの日の 曇の様子はまちまちです そしてこの多様性のために 地球に及ぼす雲の影響が 難解になります そこで 雲が地球に及ぼす影響を理解するのに セルフィーを撮ると 分かりやすくなります

宇宙から地球を観測できることは いつ考えてもすごいことだと思いますが それでも全てを見ることはできません 雲が視界を遮るからです それが雲の役目です この厚い下層雲は 日除け効果に優れています 太陽から届くあらゆる光の およそ20%を反射します 太陽光エネルギーがたくさん捨てられます 下層雲は強力な日除けの役目をし 地球の温度は下がります ところがそれだけが雲の役割ではありません 地球は温度を保っており ある温度を保つ全ての物体同様 熱を放射します 宇宙に向かって 熱エネルギーを放射しています この現象は赤外線の観測で分かります ここでも雲は視界を遮っています なぜなら上層雲は大気の最上層の 寒い所に存在します つまり これらの雲から宇宙に放射する熱が ほとんどありません と同時に地球から来る熱も ブロックもしています 地球が自然に冷却するのを 上層雲が妨害しているのです それが強力な温室効果を生み出すのです このように 雲はとても大きな2つの異なる作用を 気候システムにもたらしています 下層雲が日除けの役割を果たし 地球を涼しくしており 上層雲が温室効果を生み出し 地球を温めます

現時点でこの2つの効果は 相殺されてはいません 日除け効果の方がやや強いので もし明日 全部の雲が無くなってしまったら 念のため―それを提唱している わけではありません 地球は暖かくなります もちろん雲が全て失くなることは ありません でも気候変化は変化の問題です そこで この質問ですー 地球の温暖化は雲をどのように変えるのか? 雲は地球の温度を調整するのに 重要な役割を果たし 地球を温めると同時に冷やすことを 覚えておいてください 少しの雲量の変化でも 重大な結果を招く可能性を持ってます そこで こう質問もできますー 雲は地球温暖化に どのような影響を与えるのか? その答えの中に希望の兆しが あるかも知れないのです

温暖化が雲の変化の引き金になって 温室効果を減らしたり 日除け効果を高めたりすると 雲の冷却効果が高まるかもしれません 温暖化と逆の効果を 生み出すことになり 控えめな温暖化を予測する 気候モデルには それが織り込まれています しかし気候モデルは雲の問題と 変化する方向の不確かさで 苦心しています 雲は温暖化への対応の助けになる 可能性を持つ反面 状況を悪化させる可能性もあります

気候変動が進行していることは 分かっています 目に見える現象だからです 気温の上昇 氷冠の融氷 降雨パターンの変化が見られます 雲にも変化があると 思うかも知れません ところがここで残念なことがありますー 雲は見えにくいのです そんなこと言うと 太平洋岸北西部出身の皆さんが 「ならば雲に慣れている私達が教えてあげる」 と言う様子が見えます

(笑)

その皆さんに言いますが 私たちも上空を仰いで見てみました

(笑)

ところが雲の科学の研究では 全部の雲を 全地域にわたり 非常に長期間 観察する必要があります それがこの研究の困難な部分なのです そこで人工衛星ほど雲の観察に 適したものはありません 雲ばかり見て暮らす 英国人にも負けません

(笑)

幸い 人工衛星による雲の観測は 行なわれており 私の生まれた1980年代まで さかのぼって記録があります ところがこれらの人工衛星は 気象のために開発されたもので 気候観測のためではありません 長期観測には対応はしていませんでした そこで長期トレンドの情報を集めるのに 気候科学が必要なのです 複数の人工衛星はそれぞれ 観測角度や軌道が異なり 搭載したカメラ機器も異なるので 観測データを うまく継ぎ合わせなければなりません その結果として 我々の知識にはまだ欠落が生じています ところがこのような 「雲のかかった状況」からも 将来の予測に向けたヒントを得られます

観測結果を見ると 目を引くことが一つありました 雲は移動しています 地球の温度が上がると 上層雲は上昇します 大気上層の一番高くて冷たい部分へ 向かいます これはどう言うことかと言うと 地球は温まっていても 上層雲の温度は上がりません だいたい同じ温度を保ちます 宇宙へ排出される熱は 増えるわけではありません 一方で 温暖化している地球からの熱を 雲がもっと閉じ込めるようになります この現象は温室効果を高めます 上層雲が 温暖化を悪化させているのです

雲は違う次元にも動きます 大気の循環ー 大気中の空気と水分の 大規模な動きですが ここにも変化が見えており 雲もそれに伴って変化しています 大きなスケールで見ると 雲は熱帯地域から両極地に 向かっているようです 年とともに暖かい方に向かう あなたの祖父母とは逆方向です これが問題です なぜかと言うと 太陽光線を遮ろうとするなら 高い緯度にいるよりも 熱帯の強い日差しのあたる 熱帯地方の方が効果的です これが続くと 温暖化を悪化させます 何年かけて追求していても まだ発見していないことは この反対の現象が起きている兆候です 観測事実として 雲が温暖化を明らかに減速していることは 証明できていません 地球は自らの力では 熱を下げられないようです

まだ不確かなことがあります 未来のことは まだ定かではありません それにも関わらず 我々は自分の子供達を 戻ってこられない未知へと送り込みます 彼らがその状況に立ち向う 準備ができていることを希望します そのためには地球を観測する人工衛星を 軌道に留まらせることが必要であり 雲を苦手とは思わない 多様で 頭が良くて 有能な人材を雇い 気候モデルを進歩させる必要があるのです

不確かであることは無知とは違います 全てが分かっていなくても 何も知らない訳ではありません 二酸化炭素の影響は分かっています 私のキャリアは天体物理学から 始まりましたので ここが宇宙の中で最高の場所と 私が言うことは 信用してもらえるでしょう 他の惑星には 液体の水があるかもしれませんが 地球にはウィスキーがあります

(笑)

(拍手)

地球に住む私たちは幸運です だからといってその幸運に 甘んじることはできません 雲が地球を救うとは思えません それは多分私たちの肩にかかっています

ありがとうございました

(拍手)

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このプレゼンテーションについて

気候変化が進んでいるのは確かで、この事実に論議の余地はありません。ところが、実際はまだ解明できていないことも沢山あり、その理解を深めることで気候変化を減速させる可能性があります。未だに解っていないことが一つあります― 雲はこの過程の中でどのような役割を果たすのでしょう? 雲は気候変化の影響がはっきりするまでの時間稼ぎに役立つ可能性を秘めている反面、状況を悪化させることも考えられます。気候科学の専門家ケイト・マーベルが、雲の科学を解説し、温まる地球を解熱するのに必要なポイントを説明します。

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