気候変動によって出現する異常な気象パターン(12:10)

ギャビン・シュミット(Gavin Schmidt)
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対訳テキスト
講演内容の日本語対訳テキストです。
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私たちは 複雑な環境の中で暮らしています 複雑性とダイナミズム 様々なパターンが 衛星写真やビデオから見てとれます 窓外の景色を見ても分かります 果てしない複雑さです しかし どこか馴染みがあり パターンは繰り返しますが 一定ではありません だから 理解するのが とても難しいのです 目にするパターンは すべて規模が異なり そのパターンを細分化して 「小さな気候モデルを作ってみる」とは 言えません 研究室で研究対象を より小さく細分化していく 通常の還元主義の産物を用いて 「今何か分かった」とも言えません 全体を理解しなければ 何も理解したことになりません

これらのパターンには さまざまなスケールのものがあり とてつもない桁の範囲- およそ14桁の範囲に及びます 雲の元となる 微細粒子から 地球規模まで つまり 10のマイナス6乗から 10の8乗まで 空間的なスケールは14桁に及びます 時間的には ミリ秒から数千年まで ここでもおよそ14桁の範囲があります

これは何を意味するのでしょうか? もしこれらの計算方法が 分るのならば 計算結果はそのまま信ずるに足ります では これを 小さな方眼に分割していきましょう それは物理現象の結果ですね? 気象モデルについて考えるとき 空間的には地球規模から数kmまで 5桁の範囲に及びます 時間的スケールの範囲は 数分から10日間 もしかすると 1か月かもしれません 私たちの関心はそれ以上です 私たちは気候に関心があるのです 数年~数千年という時間での 変動を知りたいのです これにはより小さなスケールでの 理解が必要です 下位のスケールにおける 未解明の物理過程については 何とかして概算しないといけません それがとても難しいのです 1990年代の気候モデルは もっと小さな方眼のマスにとどまり 3桁程度のものでした 2010年代の気候モデルは 現在これを使って仕事をしていますが 4桁の範囲に及びます 14桁に到達できるよう 10年ごとにほぼ1桁ずつ増やせるよう 気候モデルのシュミレーション能力を 高めています 空間的なスケールを1桁増やすには 計算を1万倍多く行なわなければなりません モデルの改訂にあたって 我々はより多くの要素を考慮し より多くの疑問に 答えられるようにしています

では 気候モデルとは どのようなものなのでしょうか? 白状しますが これが旧型の気候モデルです 1枚のパンチカードが Fortranプログラムの一行分です もはやパンチカードを使っていませんが まだFortranは使っています C言語のような最新式のアイデアは 気候モデルのコミュニティに さほどの影響を与えませんでした

では その対処方法は? ご覧になった複雑性を プログラムの各行へと 落とし込んでいくのでしょうか? 1つのピースは一度に処理します これは北極圏を飛んだ時に 撮影した海氷の写真です 氷が成長したり 溶けたり 形を変えたりする あらゆる物理現象を見ることができます 物質の流れが分ります 雪が氷になる割合を観察し それをコード化できるのです それをコードにまとめるのです これらの現行のモデルは 約百万行のコードからなっており 毎年 数万コードずつ 増えています

だから そのピースも他のピースも 見ることができるのです 雲で起きていることは? 雲が作られたり 消えたり 雨が降るときには 何が起きているのでしょうか? それは 別のピースの例です 太陽から届いた放射光が 大気圏を通過する際に 吸収されたり反射する時には どの様なことが起きているのでしょうか? それら微細なピースも プログラム化できます その他のピースの例には 海流を変える風があります 土壌にある水を運んで 大気中に戻す 植物の役割などもあります そして これらの諸要素を すべてまとめて システムに組み込みます これらすべてのピースが 全体を構成するのです

なんとなく ご理解いただけましたか 気候システムで起きていることの 素晴らしい例を見て頂きます ここでご覧になるものは 何れも システムから出現したパターンで 南洋の渦や メキシコ湾の熱帯低気圧 ―今にも 太平洋上で あと2つ生まれようとしています- それに大気中の水分の流れなどです これらは全て 先にお話しした小規模な過程の 相互作用から生じたものです 「南洋で小刻みな動きをせよ」 というコードはありません 「互いの周りを回転する 2つの熱帯性低気圧をもて」 というコードもありません これらの事象すべてが 結果として出現したものなのです

非常に良いことですし 素晴らしいことです でも システムに 変化を与えると何が出現するか 知りたいのです 何かが変わると どのような変化が もたらされるのでしょうか? 様々な要因が システムに変化をもたらします 数十万年に渡る 地球の公転軌道の揺れで 気候が変わります 太陽で起きる11年と より長期の周期的変動も 気候に変動をもたらします 大きな火山が噴火すると 気候が変わります バイオマスの燃焼、煙 エアロゾル粒子などの変化で 気候が変わります オゾンホールが 気候に変化をもたらしました 森林破壊により地表の特性や 水の蒸発の仕方や システム内の動き方などが変わると 気候が変わるのです 何もなかった所に 飛行機雲が生じると 気候が変わります 言うまでもなく 温室効果ガスでシステムが変わります

これら各々の変動は 我々のシステムに関する理解度を 測る際の 目安となります モデルのスキル(能力)とは何かを 確認することができます さて わざと「スキル」と言いました モデルに良いも悪いもなく 常に正しくありません いつでも近似なのです 確かめるべきことは モデルがあることにより ない場合よりも より情報を与えうるかということです もしそうであるなら スキルがあると言えます これは海面付近の気圧に対する オゾンホールの影響を 示したもので 南洋や南極大陸周辺には 低気圧や高気圧があります これは観測データです これがモデル・データです データがかなり一致しているのは 成層圏の温度を制御する物理や それにより南洋周辺に 風が起きることを 理解しているからです

その他の例も見てみましょう 1991年のピナツボ山噴火により 膨大な量のエアロゾルや粒子が 成層圏へと舞い上がりました そのため地球全体における 輻射のバランスが崩れました 噴火前と比べると 入射する太陽のエネルギーが減少し 地球を冷却しました 赤い線と緑の線は 予測値と実測値の 差を示しています このモデルはスキルに満ちています 地球規模の平均値だけでなく 局所的なパターンも 高い精度を有しています

もっと多くの例もお見せすることもできます 例えば 成層圏のオゾンを変化させる 太陽周期に関連したスキルです 6000年という時間にわたる 公転軌道の変化に関連したスキルです それを検証することができ モデルはスキルに満ちています 2万年前の氷床に関して モデルはスキルに満ちています 20世紀における 数十年にわたる動向に関して 各種モデルはスキルに満ちています 8000年前に起きたある湖の湖水が 突然 北大西洋へ流出したことによる 気候変動の モデルによる再現も成功しています データと一致しています

様々な対象や 様々な評価により モデルが対象とする 範囲を広げ より興味をそそる質問がなされる より複雑な状況へと導きます たとえば オレンジ色で表示された サハラ砂漠から飛散する粉塵は 大西洋の熱帯性低気圧に どう影響するのでしょうか? 赤い点で表示された バイオマス燃焼の有機エアロゾルは 雲や降水パターンに どのような影響を与えるのでしょうか? 白い断片で示された 欧州の硫酸塩による汚染は どうなるのでしょうか? これが地表の温度や 地表に届く太陽光の量に どのような影響を与えるのでしょうか?

世界中のことを調べることができます 中国に発する公害や 暴風雨が大気中の海塩粒子に及ぼす 影響を調べることができます これらの様々な事象が 偶然同時に起きた場合の影響を 予測することも可能であり より興味深い疑問を提起できるのです 大気汚染と気候は いかに影響しあうのでしょうか? 大気汚染や気候に同時に 影響をあたえる事象を 変えられるのでしょうか? 答えは「変えられる」です

これは20世紀を通した変化の様子です 最初のものは モデルです 計算結果は 実際の天気とは少し異なります 2番目のものは 観測結果です 1930年代を通して見てみます 継続して変化が起きているものの ノイズといえるレベルのものです 1970年代になると 変化の兆しが見えます 予測と観測結果は より似てきます 2000年代になると 地球温暖化のパターンが 観察結果とモデルの双方で見られます

私たちは20世紀に 起こった事を知っています そうですよね? だんだん気温が 上がってきているのです 何故そうなったのかモデルで確認すると -どうですか そう その通りです - 基本的には大気中に放出した 二酸化炭素が原因となっています 現在に至るまで ぴったりと一致します

それでもモデルを見る理由が 一つあります それは このフレーズにあります 「未来の観察結果があったなら モデルよりも当然それを 信頼するでしょう でも 残念なことに 未来の観察結果などないのです」

未来のデータを見ると 違いが出てきます 未来のことは分からず 不確かですが 選択肢はあります これが今ある選択肢です 大気中の二酸化炭素の排出量を 削減するために 何かをすることができます その結果が上の図です もっと努力すれば さらに削減することができます そうすれば今世紀末には 現在よりさほど増えていることは ないでしょう あるいは 単に運命に委ね 旧態依然の態度を 続けるのです これらの選択肢の違いは モデルを見るだけでは 答えることはできません

オゾン層の破壊に関する研究で ノーベル化学賞を受賞した シャーウッド・ローランドは ノーベル賞授与式の時 名言を残しました 彼はこう問いかけました 「予測を立てるような科学を 発展させたとしても 予測が実現するのを 手をこまねいて ただ待つだけならば 結局のところ そんな科学が何の役に立つでしょう?」 モデルはスキルに満ちていますが モデルの情報をどう使うかは 完全にあなた次第なのです

ご清聴ありがとうございました

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このプレゼンテーションについて

気候科学者のギャビン・シュミットは「気候変動は個々の物理現象に細分化するだけでは理解できない。全体を理解しなければ何も理解できない」と言います。この啓蒙的な話の中で、小規模な環境的事象が絶え間なく起こす複雑な相互作用をシュミレートできる素晴らしいモデルを使って、気候変動の全体像をどのように研究しているのか説明します。

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