仮想ラボが科学の授業を変える!(11:26)

マイケル・ボデカー(Michael Bodekaer)
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対訳テキスト
講演内容の日本語対訳テキストです。
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今日 みなさんに このタブレットと 私が装着している このバーチャルリアリティ・ヘッドセットが 科学の授業にどのような革命を もたらすかをお見せしましょう。
それと 科学の教師が 生徒の学習効率を数段 高められる方法を お見せしましょう。どうすればそのすべてが 可能になるのかをお見せする前に 科学の授業の質を高めることが なぜ重要なのかについて 手短にお話しましょう。

皆さんもお気づきのはずですが 世界は急ピッチで成長しています。その成長の裏側には越えるべき 課題もたくさんあります。例えば地球温暖化の問題であるとか 飢餓問題 水不足 病気の根治など 数多くあります。

そういった大きな難問解決に いったい誰が手を貸すのでしょうか。最終的にはそれは 彼ら若き学生たちなのです。彼らこそ 若き聡明な 次世代の科学者たちなのです。様々な面で私たちが 彼らに期待しているのは 斬新で偉大な発想で 迫り来るあらゆる難問を 解決してくれることです。数年ほど前 私は ビジネス・パートナーとともに 大学でこういった感じの 学生を前に教鞭をとっていました。私たちが教えていた学生は こんな感じだったんです。

観衆:(笑)

そうです これが現実なのです。学生が退屈してしまって 興味をなくし、なぜ それを学ぶのか 理由さえわからなくなる――そんなことが 世界中のあまりにも多くの大学で起きているのです。
そこで私たちは 斬新な教え方が ないものかと探したのですが、極めて残念な結果に終わりました。私たちが目にしたのは 本がデジタル書籍になり 黒板がYouTubeの動画に替わり 大ホールでの授業が MOOC、すなわち 大規模オープンオンライン講座になっていく様子でした。よく考えてみればここでしていることは 同じ内容を 同じ形式で より多くの学生に差し出しているだけなのです。素晴らしいことではあるんですよ。誤解しないでくださいね。でもどちらかといえば、依然として教え方は同じで 特に革新的なものではないんです。

ですから私たちは他で 探すことにしたのです。それで わかったのですが、フライトシミュレータを 実際の飛行訓練と組み合わせた場合 非常に効果があがることが 繰り返し証明されていたのです。それを科学の授業に応用することを 思いついたのです。仮想ラボシミュレータを 造るのはどうかと思ったのです。

それで やってみました。私たちが目指したのは 基本的に 完全再現した 個人対応型の仮想現実ラボを作り、そこで学生たちが本物のラボで実験するかのように 数式に基づく実験を 疑似体験できるようにすることです。

しかし単純な模擬版というわけではなく MITのような最高峰の大学と協力し 最先端のがんに関する研究を 学生に教えられるようなレベルの 先進のシミュレータを 制作することにしたのです。学生が本物の実験室に入る前に 実験を疑似体験できるようになると、大学はいきなり何百万ドルもの経費を 節約できるようになりました。それだけではなく 学生は 疑似装置の中で何が起きているのか 分子レベルで 理解できるようになったのです。その上 実験室では危険すぎる実験まで できるようになったのです。例えば 重要なテーマでありながら 安全性を理由に多くの学校で 教えることができなかった サルモネラ菌について学ぶことができるのです。
それに もちろん、テストをした後 教師はダッシュボードを使って 学生全員の進度を把握できます。

それだけではありません。授業中に学生たちの興味を維持するためには 意味を理解することが とても重要だからです。そこでゲームデザイナーを連れて来て 楽しくて引き込まれるような ストーリーを考えだしたのです。例えば この授業で学生は ドラマ『CSI:科学捜査班』のような 殺人ミステリーを 学習課題の科学的知識を駆使して 解決しなくてはなりません。

これらすべてを始めたときに 返ってきた反応は 非常に肯定的でした。ここには300名の学生がいますが CSIの殺人ミステリーに 真剣に取り組みながら 課題である科学的知識を学びました。最も感動したのは 授業の後 学生が すっかり驚いて 戸惑い気味に 私のところに来て、「仮想ラボに2時間もいたけれど 途中でFacebookを一度も見なかった」 と言った時でした。

観衆:(笑)

学生にとって それほど身を入れ 没頭できるということなのです。

実際にどのような 効果があったのかを理解するために 学習心理学者が160名の学生を 調査しました。被験者はスタンフォード大学と デンマーク工科大学の学生です。学生を二つのグループに分けました。ひとつのグループは 仮想ラボシミュレータを使い、もうひとつのグループは従来の 教え方で学びました。両グループとも 授業時間の長さは同じです。興味深いことに 学生の学習結果を明確に測定するために 実験の前後に テストが実施されました。その結果 仮想ラボを使うと 従来の学習方法より 学習効率がなんと76%も 高まったことがわかりました。
さらにおもしろいことに、この調査の第二部として 学習に対する教師の影響力についても 調査したのです。その結果 仮想ラボと 教師による 手ほどきや指導を組み合わせると 学習効率は101%も 向上するということが 判明したのです。つまり かけた時間が同じでも 教師の影響力は 二倍になるということになります。数ヶ月前に 私たちは自問自答を始めました。学習心理学者、教師、科学者 ゲームデベロッパなど 素晴らしい専門家のチームが あるわけですが、どうすれば 新たな教育の概念を 生み出し続けられるだろうかと 私たちは自分たちに 問い続けることにしたのです。

そして今日ここで 皆さんに 私たちが考案したことと そして非常に苦労して制作してきたものを 発表できることを嬉しく思います。簡単にどういうものかを説明します。基本的には携帯電話を使います。すでに殆どの学生がスマホを 持っていますから。スマホをこの安価な VRゴーグルにつなぎます。これで仮想世界の中に 文字通り入っていけます。会場にいらっしゃる何人かにも 試してもらいましょうね。とにかく実際に体験してもらうと いかに没入感を得られるかが わかると思います。この仮想ラボ空間に まるで 本当に足を踏み入れたように感じます。スクリーン上に私が見えますか?

会場:見えます

マイケル・ボデカー:よかった!

たった今 私の携帯電話は 百万ドルクラスの 操作可能な すごい装置一式が揃う アイビーリーグ大学の研究室を完全にシミュレートしています。例えば このピペットを使って 実験をすることができます。ここにはE-GelもあればPCR装置も――ああ みてください、次世代シーケンサー (NGSM)も それに電子顕微鏡もあります。そうです。電子顕微鏡を 携帯できるなんてすごいでしょう。ここには私のパソコンがあって、このマシンを使ってさまざまな実験が可能です。こちらにはドアがあり 他の実験室で 別の実験ができます。こちらには私の学習用タブレットがあります。インテリジェントタブレットなので 関連する理論を検索し 読むことができます。ご覧のように インタラクティブに反応します。今ここで行っている実験に関連する ビデオや情報を閲覧できるのです。ここに来るとマリーがいます。マリーは私の先生というか ラボアシスタントで このラボ全体を案内してくれます。そしてもうすぐ 実際の教師たちが 今私がいる この擬似空間に テレポートして この実験全体を通して手助けしたり 指導したりできるようになります。

私のスピーチを終了する前に もっとかっこいいものを お見せしましょう。実際のラボでは実現不可能なものです。ここにPCR装置があります。実験を始めてみましょう 私の身体を100万分の1に縮小し 分子サイズにしてみました 試してください 本当に小さくなった気がしますから。

今私はこの装置の中に立ち DNAや分子を見ています ポリメラーゼなども見えます 試験管内で 私たちの体内で起こるのと同じように DNAが何百万回も繰り返し 複製されていく様子が ここで観察できます。あらゆることがどう作用するかを 理解することができます。

これらの新しい教え方に 可能性が詰まっていることを皆さんに少しでも感じ取って もらえればと思います。特に強調しておきたいのは 今 見ていただいたことは全部 VRゴーグルがなくても iPadやラップトップで使える点です。

それには大切な理由があります。次世代の科学者たちに 力を与え奮起してもらうために 教室内で使う新しい技術を 取り入れていく教師が必要なのです。ですからいろいろな面で 科学教育で 次の大きな 飛躍的進歩を果たすには もう技術的なことではなく 教室の中で使用可能な これらの技術を 取り入れ使っていくという 教師側の決断次第であると 私たちは信じています。ですからさらに多くの 大学や学校 そして教師が 技術開発会社と協力し合い 可能性を実現することを 願っています。

最後になりますが 私自身に夢を与えてくれた ちょっとした逸話を お話ししたいと思います。ジャック・アンドレイカの話です すでにご存知の方もいると思います。ジャックは15歳の時にすい臓がんの 安価で画期的な新診断法を発明しました。ジャックがどのように その大発明をしたのかを説明した時に そこにいたるまでに 突き当たった壁についても 話していました。その壁とは 経験不足という理由で ラボへのアクセスが 許可されなかったことでした。

もしアイビーリーグ大学の 数百万ドルの設備の仮想ラボを 世界中にいるジャックのような 生徒たちに差し出し 考えうる限りの 最新で最先鋭の機械を 与えることができたらどうでしょう。どんな科学者だって そのような環境を与えられたら 飛び上がって喜ぶことでしょう。想像してください。そういう環境が、革新的な発想で世界を変えようとしている次世代の才能ある若い科学者たちに 大きな力と新たな発想を 与える様子を。

ありがとうございました

観衆:(拍手)

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このプレゼンテーションについて

バーチャルリアリティはもはや遠い未来のお話しでも、テレビゲームやエンターテイメントにしか応用できないものでもありません。マイケル・ボデカーはバーチャルリアリティ技術を教育に取り入れ質の高い授業を身近にしていきたいと考えています。この斬新な講義では、現在の学校における科学教育の方法に革命を起こすかもしれないアイデアを披露します。

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