ルックスだけが全てじゃない。モデルの私が言うんだから信じて(9:37)

キャメロン・ラッセル(Cameron Russell)
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対訳テキスト
講演内容の日本語対訳テキストです。
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こんにちは キャメロン・ラッセルです。ここ何年かの間 モデルをやっています。実際には10年になります。この会場には 何かピリピリした 空気が漂っていますが きっと 私がこんな服を 着ているからですね(笑)

幸い 着替えを持ってきました。TED史上初 ステージ上での 衣装替えなので、これを見られる皆さんは ラッキーだと思います。
私がステージに出てくるのを見て どうなる事かと心配した方がいましたら――別に手を挙げなくてもいいですけど。後ほどツイッターで見つけますから(笑)

こんなこと出来て本当にうれしいんです。皆さんの私に対する考えを ほんの10秒のうちに変えられるなんて そんなチャンス滅多にありませんものね。このヒールは疲れるので 別の靴を持ってきて良かったわ。セーターをかぶる時 みんな笑うんですよ。滑稽な姿をしていても バカにしないでくださいね。これでいいですね。

なぜこんな事 お見せしたと思いますか? お見苦しいものを お見せしました。まあでも この写真よりは マシだったと良いんですが、イメージというものは 強烈です。しかし同時に イメージとは 表面的なものなんです。私はたった今 数秒で 自分のイメージを変えました。この写真の当時 実は男の子と付き合ったこともなく、やりにくい撮影で カメラマンの指示に従い 背中を反らせたり 男性の髪に手をやったりしたんです。もちろん 手術や こんな撮影のため数日前にやった ニセ日焼けが無ければ 容姿を変えることなど ほとんどできません。単に表面的で 変えられないものだと 分かっていても 外見というものは 私生活に莫大な影響を及ぼします。

私にとって このイベントのテーマである「勇気」とは真実を話す事だと思います。私はモデルだから このステージに立っています。顔立ちがよく そして白人なので このステージにいるんです。業界用語では セクシーガールといいます。今日は よく聞かれる質問に 答えたいと思います。普段と違って 正直にね。

まず聞かれるのは どうやってモデルになったか。いつも「スカウトされたから」と答えますが これでは答えになっていません。モデルになれた真の理由は 偉大な伝承物をうけとったからです。受け継がれた伝承物は何かというと この数世紀の間 私たちの定義する美しさは 単に健康 若さ 均整といった 生物学的に 称賛するよう仕込まれてきた要素だけでなく、長身ですらっとした体型、女性らしさや白い肌なども含むようになりました。この様に 私に都合良く 受け継がれて来た ものを使って稼いでいるわけです。これを疑問視する人もいるでしょう。ファッションに詳しい方は こう言うかもしれません。
「ナオミ(・キャンベル)やタイラ(・バンクス)、ジョン・スモールズ、リウ・ウェンなど 白人以外のモデルもいるぞ」
モデルのことを よくご存知で すばらしいですね(笑)でも実は そうではないんです。2007年 ニューヨーク大の 聡明な博士課程の大学院生が ランウェイを歩くモデルを 一人残らず数えました。雇用された677人のモデルのうち 白人以外の人種は4%未満の27人だけだったんです。

次によく聞かれる質問は 「大人になったら 私もモデルになれますか?」「さあ それは私が決めることでないし」とまず言ってから 尋ねてきた少女たちに訊くんです。「なぜモデルになりたいの? 他にもいろいろなれるじゃない。米国大統領とか次世代インターネットの発明者とか、あるいは忍者心胸外科医詩人なんてどう? まだ誰もなってないんだから 最高じゃない?」(笑)
こうやって他の選択肢を挙げても「私はモデルになりたいの」と言ったら「だったら私のボスになるといいわ」と私は答えるの。私には何の権限もないけれど、米版『ヴォーグ』の編集長や H&MのCEO、あるいは次のスティーヴン・マイゼルになれるかもしれません。モデルになりたいというのは「宝くじを当てたい」と言うのと同じことなんです。
素晴らしいことですが 自分の力ではどうにもならないことであり、キャリアとして成長できるものでもないんです。10年間積み上げてきた モデルの知識を披露します。心胸外科医と違って短く要約できちゃいます。
カメラマンがそこにいるとします。ここにライトがあって「歩いている写真が撮りたい」と言われたら 左足を 前方に 真っ直ぐ伸ばし、左手は後ろ、右手は前にやります。頭は45度に保ち、こうやって前後を繰り返します。友だちがいると想定して 振り向くんです。300回・・400回・・500回くらいね(笑) そしてこんな感じに仕上がります(笑) 真ん中の写真は ちょっと不自然ですが なんで こうなったんでしょうね。

学校を卒業して 仕事の経験もあるとしても それ以上 履歴書に書けることはありません。例えば 米国大統領になりたいとします。しかし履歴書には「下着モデル10年」採用担当者は おかしな顔をします。

さて 次に聞かれる質問は 「画像修整はしているの?」
ほぼ全ての写真が修整されます。でも それだけではないんです。この写真は私の処女作です。人生で初めて ビキニを着た時でもあります。生理すら始まっていませんでした。私生活のことに触れますが、私は ごく普通の少女でした。これは撮影数ヶ月前におばあちゃんと撮った写真です。2つは同じ日に撮った写真です。友だちが一緒に来てくれました 仏版『ヴォーグ』の撮影数日前に パジャマパーティをした写真です。サッカーチームでの写真と『V マガジン』の写真です そして最近の写真です。皆さんが見ているのは 本当の私ではないですよね。これらは作品であり、ヘアスタイリスト・メイクアップアーティスト・カメラマン・スタイリスト等の専門家を初め、彼らのアシスタントやプリプロ・ポスプロ等皆で作りあげる作品であり「私」ではないんです。

さて 次によく聞かれるのは「無料で色々もらえるの?」
日常では絶対に使わない20cmのヒールなら余るほどあります。撮影前には履きますけどね。無料でもらえるものと言えば 私生活で得られるもので、普通はあまり口にされません。地元のケンブリッジで ショッピングに行ったとき お金を忘れてしまいました。しかし欲しかったドレスがタダで貰えたんです。ティーンの時 友だちと ドライブしていました。赤信号を突っ切ってしまい 警察に止められましたが「お巡りさんごめんなさい」と言うと見逃してもらえました。こういった無料のものは 私自身に関係なく 私の外見のおかげで 得られるんです。反対に 単に外見のため 犠牲を払う人たちもいます。私の住むニューヨークで 昨年 14万人のティーンが 所持品検査を受けさせられましたが、そのうち86%が黒人かラテン系であり、そのほとんどが若い男性でした。ニューヨークには黒人とラテン系の 若者は17万7千人しかいませんから、彼らにしてみれば「検査を受けさせられるのか?」ではなく「何回受けさせられるのか? それはいつか?」なんです。
今回話す内容を検討中にあることを発見しました。アメリカに住む13歳の少女のうち 53%が自分の体を嫌っていて、17歳になるころには その値は78%にも上がっています。

さて、よく聞かれる最後の質問は「モデルってどうなの?」です。
質問者の期待する答えというのは「すらっとして 髪が美しかったら 幸せで 有名になれるわ」です。舞台裏でのインタビューとかを聞いて そう思うのかもしれません。
私たちはこう答えます。「世界中を飛び回り、才能があり、情熱を持つクリエイティブな人たちと仕事ができるのは素晴らしいです」。確かに嘘では ありませんが、真実の半分でしかありません。誰もカメラに向かっては 絶対に言わないもの――現に私も言ったことはありませんが――私たちは不安なんです。なぜ不安なのかと言うと 毎日 自分の外見を 気にしなくてはいけないからです。「足が細くて 髪がもっと艶々してたら もっと 幸せになれるかしら?」と思うことがあるならば、モデルたちに会ってみることです。申し分のない脚や髪、そしてステキな服も着ていますが、彼女たちはおそらく世界で一番身体的不安を抱えています。

私は この話の原稿を書いているとき、どうしたら正確に話の釣り合いが取れるか悩みました。このステージでこんな事を言うのは気が引けました。「私は運が良かったから こんなに得をした」その一方、こう付け足すのも 簡単な事ではないのです。「だからと言って いつも幸せなわけではないの」 でも一番難しかったのは、私たちの受け継いできた性別と人種の抑圧を話す事でした。それによって特に恩恵を受けているのが私自身だからです。
しかし、このステージに上がれて幸せで誇りにも思います。今日ここで話せて良かったと思います。10年後、20年後、30年後――もっとエージェントがついたらたぶん、どうやってこの職を得たかとか学費をどう稼いだかなんて 話さなかったかもしれません。現在 私にとって勉強はとても大切なものです。

今日の私の話を聞いて 外見上の成功や失敗の裏には イメージの持つ力の影響があるという事を 考えられるように なって頂ける事を 願っています。

ありがとうございました。

(観衆:拍手)

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このプレゼンテーションについて

キャメロン・ラッセルは自身が「遺伝子の宝くじ」に当たったと認めています。彼女は長身で美しいファッションモデル。下着モデルとしても有名です。しかし外見だけで判断してはいけません。彼女はこの勇気ある 誠実なトークで、 わずか16歳だった自身を非常に魅惑的に作りあげてくれたモデル産業に、皮肉たっぷりの眼差しを送ります。

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