かわいさ、セクシーさ、甘さ、おかしさ(7:45)

ダニエル・デネット(Dan Dennett)
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対訳テキスト
講演内容の日本語対訳テキストです。
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世界中でダーウィンに関する講演をしていて、彼の推論の奇妙な逆転についてよく話しています。このフレーズは初期の批評家によるものです。私はこの一節が好きです。ご紹介しましょう。

「いま問題としている理論においては、絶対的な無知が考案者である。それゆえ、全システムの基本原理はこう明言できる。『完璧で美しい機械を作るために、それを作る方法を知る必要はない』注意深く検討すれば、この提案はダーウィン氏の理論の要点を凝縮して表現し、彼の意味することを簡潔に表現している。奇妙な推論の逆転によって、彼は、完全なる無知が完全なる知恵に代わって、創造たる技をすべて達成できると考えているようだ」

まさにこれです。推論の奇妙な逆転ですね。
創造論者のパンフレットに面白いページがあります。
「建築者のいない建物を知っていますか? はい|いいえ
画家のいない絵画を知っていますか? はい|いいえ
製造者のいない車を知っていますか? はい|いいえ
 ―どれかに"はい"と答えた人は、詳細を書いてください」

なるほど!これによると、ダーウィンの推論は全く奇妙に逆転していますね。設計には優れた設計者が必要なのはもっともだと思うでしょう。しかし、ダーウィンは違うと言います。

さて、今日は、ダーウィンの逆転した奇妙な推論の他の例を話します。始めは混乱しますが、こちらも同じように重要なことです。チョコレートケーキは甘いから好きというのはもっともです。男性がこういう女性を好むのはセクシーだから、赤ちゃんを溺愛するのはかわいいから、そして、ジョークが楽しいのはおかしいから。

これらは全て反対です。なぜなのか、ダーウィンが示してくれます。
まずは甘さですが、私達が甘味が好きなのは、糖分探知機として進化したからです。大雑把に言えば、糖分は高エネルギーなので、それを好む様に脳の配線が組まれたのです。私達が好きだからハチミツは甘いのです。「甘いから私達はハチミツを好む」ではないです。本質的に、ハチミツに甘さがあるわけではありません。ブドウ糖分子を凝視しても、それがなぜ甘いのかはわからないでしょう。なぜ甘いのかを知るには、脳の中を見なければいけません。ですから始めに甘さがあり、私達が甘さを好むように進化したと考えるのは順番が違っています。本当はその反対です。甘さは進化上の関係付けの中で生まれました。

同じように、この女性たちが本質的にセクシーなのではありません。これはいいことです。さもなければ、自然の摂理に問題が起こります。チンパンジーはどうやって相手を見つければいいのでしょう? 妄想を頼りにするやり方もあるかもしれないですが、もっと手っ取り早い方法があります。こういう外見を好む様に脳を配線すればいいのです。実際、そうなっているようです。たったそれだけのことです。600万年以上にわたり、ヒトとチンパンジーは別々の進化を経ました。おかしなことに、私達の体毛は退化しました。そうでなければこれが最高のセクシーさだったでしょう。

私達の甘味嗜好も、高エネルギーの食物を本能的に好むように進化した結果です。チョコレートケーキのためにデザインされたわけではありません。チョコレートケーキは「超正常刺激」です。この用語はカモメの有名な実験をしたニコラース・ティンバーゲンによるものです。彼はカモメのクチバシに着目し、オレンジの斑点を大きくすると、ヒナはより強くその部分をつつくようになることを発見しました。それは過剰な刺激ですが、ヒナはそれを好みます。このことから言えるのは、チョコレートケーキは私達の脳の配線を圧迫する「超正常刺激」ということです。「超正常刺激」はたくさんあります。まず、チョコレートケーキ、セクシーさにも超正常刺激はたくさんあります。

かわいさにも「超正常刺激」があります。
これが良い例です。私達は赤ちゃんが好きで、汚れたおむつにも嫌気がさしません。赤ちゃんは私達の注意を引いて、愛され育てられることに成功しています。ところで、最近の研究によると、母親は自分の赤ちゃんの汚れたおむつのにおいの方を好むようです。自然の仕組みは上手くはたらいています。もし赤ちゃんの外見が違っていて、こんなふうだったら、もしこんな赤ちゃんをかわいがらなければいけないとしても、抱きしめたいとはなかなか思わないでしょう。これが、奇妙な逆転です。

最後におかしさについてです。私の答えはここまでと全く同じです。しかし、難しくてよくわかっていません。だからおかしさを最後にしました。あまり多くのことは語れません。非常に難しい問題ですが、誰かがやれなければなりません。そして、成し遂げられたとき、努力に値する報酬を受けとることは大切です。私と同僚がついに答えを見つけました。
それは、忌まわしい事務作業をこなす脳への報酬として配線された神経システムです。この考察のキャッチフレーズは「デバッグする楽しさ」です。全てを詳しく説明する時間はありませんが、一部のデバッグだけが報酬の対象になると言えます。ジョークのスイッチを操作して、ユーモアのオンとオフを切り替えることで、ユーモアを神経科学の道具として活用しています。今はおかしくない…今はおかしくなった…もう少しおかしくなった…今はおかしくない…。このようにして、脳の構造について、脳の機能的構造について実際に分かってくることがあるのです。

マシュー・ハーレーがこの理論の考案者です。これをハーレーモデルと呼んでいます。
彼はコンピュータ科学者です。レジナルド・アダムズは心理学者です。そこに私が加わって、3人で研究成果をまとめています。
どうもありがとうございました。

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このプレゼンテーションについて:

なぜ赤ちゃんはかわいいのか?なぜケーキは甘いのか?かわいさ、甘さ、セクシーさ(とおかしさのマシュー・ハーレーによる新理論)について、哲学者ダニエル・デネットは予想もできない進化の推論を紹介します。

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