コラム・連載

2020.05.15|text by 高須 克弥

シーズン1 第4回 ミケランジェロ™

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ミケランジェロ™

「ミケランジェロ™」というボディデザインの話も伺いたいです。これは肥満治療ではなく、理想のボディラインを作り出すボディデザインアートだそうですね。

脂肪吸引は私の師匠であるフランスのピエール・フルニエ先生が初めて行ったんです。日本では私が初めてしたのですが、脂肪吸引は大変な力仕事なので疲れるんですよ。そこで、超音波で脂肪を分解して吸い出すと、医師の身体が楽になるから、その分、微小で細かい仕事ができるのではないかと考えました。最近ではコンセプトが変わり、脂肪吸引の英語であるliposuctionから、彫刻という意味のlipo-sculptureになってきたんです。脂肪を取るのではなく、いかに綺麗に残すかということですね。発展途上国では脂肪をどれだけ取るのかとまだ言われていますが、全部取ってぺったんこにしてはいけません。良い格好にして残して、ミケランジェロの彫刻のように作るのがいいものです。ミケランジェロ™では従来の脂肪吸引では難しかった、皮膚に近い部分の脂肪も立体的に除去することができますし、取り除いた脂肪は注入材として使用できます。「ウエストはすっきりさせて、胸をふっくらさせる」や「女性らしいヒップラインを作りたい」といった細やかなボディデザインが可能になります。

大がかりな手術になるのではありませんか。

いえ、入院の必要はありません。血管や神経などの組織にダメージを与えることなく、脂肪だけを選択的に剥離、乳化してから、刃のついていない極細の管で優しく吸い出します。吸い出した脂肪はそのままバストやヒップといった、ご希望の部位に再注入ができますが、過去4年間の平均生着率は80%ほどとなっています。ただ、形が崩れないように、ガーメントというコルセットのようなものを2週間つけて生活していただきます。

医師にも高い技術が求められますね。

この治療で最も大切なのは手術を受ける方がイメージされている、理想のボディデザインを創造するための技能とセンスです。最新の装置を使用しても、治療を行う医師が皮膚近くの脂肪を除去する知識や技能、理想のボディデザインをデザインするセンスを身につけておかないと、受ける方が満足できる治療結果に繋がりません。そこで、ミケランジェロ™治療を行えるのは専門のトレーニングセンターでトレーニングを受け、ライセンスを取得した認定医師のみとしています。このライセンスを日本で初めて取得したのが私どもの医師であり、この機械のパテントは私が持っているんですよ。

そうだったんですね。

そのパテントは20年間有効だったのですが、ほかの人たちはそれが切れるのを待っていたようで、切れた途端に世界中で広まりました。コロンビアの医師もこれで私の手術をしたいと言ってきました。そういう医師は多いですね。「高須の手術を実験でやった」というと、いい宣伝になって、客が来ると思っているみたいです(笑)。それで医師も看護師もスタッフも皆を連れて、ここでしました。

いかがでしたか。

全身麻酔でしたのですが、ものすごく辛かったです。コロンビアの医師もここまで豪華絢爛に手術したのは初めてだと言っていました。私としては部分的にしたのではつまらないから、思い切ってやってくれと頼みました。そこで、あとから彼らが気づいたことなのですが、脂肪はそのまま取ったものよりも、超音波で分解して取ったものの方が幹細胞が多く残っている分、つきが良くなります。バターのように、脂肪の格好をしているのではなく、血が混ざった脂のような状態なんです。それを入れてやると、きちんとつきます。これで脂肪が成長することが分かり、幹細胞が注目されるようになりました。でも、私は幹細胞のパテントは持っていないんです。ただ、日本では脂肪幹細胞での脂肪移植で豊胸手術をするというのは受け入れられないようです。

海外では主流なのではありませんか。

海外でもそんなに多くはありません。やはりバッグを入れるものの方が主流で、脂肪幹細胞での脂肪移植はこういう方法もあるよという選択肢の一つですね。バッグはできあがったものをジグソーパズルのようにはめるだけですが、脂肪幹細胞での脂肪移植は取って、処理して、また入れるというのが大変なんです。鼻でも低い鼻にできあがったものをポンと入れる方が簡単ですし、リスクも低いです。医師は安全で、リスクが少なくて、処理が大量にできるものがいいんですよ。ユニクロ式のビジネスが流行っているのと同じです。そう言えば、かつてはユニクロと馬鹿にしていた人たちもセレブがユニクロを着ていると分かると、ユニクロもいいじゃないかと言っていますよね(笑)。それで、大スターがプチ整形をしたと広まると、プチ整形が一般化しました。でも、私どもではプチ整形のパテントを取りそこねてしまいました。

プチ整形ブームを起こす

ヒアルロン酸のプチ整形のことですか。

あのヒアルロン酸を開発したのはスウェーデン人のオギラップで、私の友人なんです。私はその会社の大株主でした。オギラップが平べったい顔のアジア人にこれを打ったら、売上が伸びそうだということで、私が最初に打って、皆に見せると「すごい」ということになり、日本でヒアルロン酸の売上は爆発的に伸びました。これが日本でのプチ整形ブームの始まりです。このニュースを知った『TIME』が取材に来てくれて、特集記事にしたことから、波及効果が出て、アジア全域にプチ整形ブームが広がっていったんです。ただ、プチ整形そのものは難しい技術ではありません。ただ注射を打って、膨らませるだけなので、パテントにはならないんです。でもプチ整形という名前のパテントを押さえておくべきでした。

ネーミングのパテントもあるんですね。

糸で上げるゴールデンリフト、ほかにもロシアンリフトやイタリアンリフトなど、私どもでは名前を色々と押さえているのですが、皆がその名前だけは使わないようにしているみたいです。昔は皆も調べなかったのですが、今は特許庁の端末を叩けば、すぐに分かりますからね。プチ整形は名前だけ押さえて、稼げるだけ稼ぐと良かったです(笑)。

ロシアンリフトはどのような状況だったのですか。

ロシアンリフトはポリプロピレンの毛羽立った糸を皮下に埋め込んで、弛みを矯正する手術のことで、ロシアのスラマニーチェ先生が開発しました。そのうち、スラマニーチェ先生がポリプロピレンの糸を螺旋状に巻いたスプリングを皮下に埋め込み、スプリングの戻る力で顔の弛みを解消するという技術を開発されたんです。画期的でしたね。また、ヴィシュネフスキー医科大学のアダミアン教授は金とプラチナの合金を特殊な方法で全身に埋め込む方法を開発されており、私はその2つの発明を合体させて、新しい発明をしたのです。しかし、パテント申請はスラマニーチェ先生、アダミアン教授、私の連名にしました。

著者プロフィール

高須克弥院長 近影

著者名:高須 克弥

高須クリニック 院長

  • 1945年 愛知県幡豆郡一色町(現 西尾市)で生まれる。
  • 1969年 昭和大学を卒業する。
  • 1973年 昭和大学大学院を修了する。
  • 1974年 愛知県幡豆郡一色町に高須病院を開設する。
  • 1976年 愛知県名古屋市に高須クリニックを開設する。
  • 2011年 昭和大学医学部形成外科学(美容外科学部門)客員教授に就任する。
バックナンバー
  1. インタビュー 高須克弥先生に訊け
  2. 12. 昭和大学での日々
  3. 11. 東京オリンピック
  4. 10. ウィズコロナの時代に
  5. 09. 最近の美容外科に警鐘を鳴らす
  6. 08. 社会貢献活動
  7. 07. 愛知県に暮らす
  8. 06. 新型コロナウイルス
  9. 05. 新しい美容外科
  10. 04. ミケランジェロ™
  11. 03. 国際交流
  12. 02. 血液クレンジング
  13. 01. 美容外科のニーズ

 

  • Dr.井原 裕 精神科医とは、病気ではなく人間を診るもの 井原 裕Dr. 獨協医科大学越谷病院 こころの診療科教授
  • Dr.木下 平 がん専門病院での研修の奨め 木下 平Dr. 愛知県がんセンター 総長
  • Dr.武田憲夫 医学研究のすすめ 武田 憲夫Dr. 鶴岡市立湯田川温泉リハビリテーション病院 院長
  • Dr.一瀬幸人 私の研究 一瀬 幸人Dr. 国立病院機構 九州がんセンター 臨床研究センター長
  • Dr.菊池臣一 次代を担う君達へ 菊池 臣一Dr. 福島県立医科大学 前理事長兼学長
  • Dr.安藤正明 若い医師へ向けたメッセージ 安藤 正明Dr. 倉敷成人病センター 副院長・内視鏡手術センター長
  • 技術の伝承-大木永二Dr
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